農用地除外(青地除外)の道筋:年単位案件を止めない情報整理術

農用地区域の土地を別用途へ転じるには、通常農振除外→農地転用→(必要に応じ)開発許可の順を踏みます。
受付が年数回の自治体も多く、提出順の誤り協議の遅れ1年単位の停滞につながります。
本コラムでは、事前相談の論点整理、事前協議メモの作り方、関係機関連携の運用、縦覧や住民説明の資料術を解説し、地権者合意形成費用の見える化で合意を加速するコツを共有します。用排水路の取扱いや下水未整備など、典型的“詰まり”への先手も示します。

目次

全体フロー

提出順を厳守しつつ並行協議

事前相談→申出→関係機関連携→公告・縦覧→決定→転用→他法令。この順序を崩すと差戻しのリスクが高まります。並行協議では都市計画・環境・上下水・道路・景観の各担当と論点・期限・担当者を明記したメモで連携します。

事前相談

最初に市町村の農政担当(必要に応じて農業委員会)で、計画地の位置・面積・現況(作付状況、用排水路の有無、地目)と、転用後の用途・規模・排水方式・交通発生の見込みを共有します。
ここで重要なのは、自治体ごとの受付時期(年1〜数回のことが多い)と審査観点(営農への影響、代替農地の考え方、景観・環境配慮)を把握し、受付締切から逆算した年次タイムラインを作ることです。上下水道の整備状況、道路幅員や接道条件、土地改良区や用水路管理者の関与要否も、この段階で“当事者マップ”として洗い出します。持参資料は「位置図・公図写し・現況写真・計画概要メモ(A3一枚)」が基本で、ここで可否の大枠と“条件付きの可能性”を早期に見極めます。

申出

農用地区域からの除外を求める正式手続です。
決められた受付期間内に、申出書、位置図、配置図(概略で可)、排水計画の考え方、営農影響の説明、代替農地の検討メモ、地権者同意(代表者一括でも可否を要確認)などを整えて提出します。
締切厳守が鉄則で、1日でも遅れると次期受付まで待つ可能性があります。面積の端数や地番の誤記、代表者の資格証明の欠落、同意書の日付不整合は差戻しの典型です。申出は「転用計画の骨格」を示す行為でもあるため、のちの転用許可や開発許可と同一内容で整合することを意識して記載します。

関係機関連携(並行協議)

申出と並行して、都市計画・環境・上下水道・道路管理者・景観(必要に応じ河川・土地改良区・消防等)と個別協議を走らせます。目的は、後工程での設計や説明の“やり直し”を防ぐために、各課のボトルネック論点(例:公共下水未整備、道路幅員不足、用排水路の付替え可否、騒音・景観配慮)を早期に確定させることです。協議はメール・面談いずれでも構いませんが、論点/必要資料/回答期限/担当者名・連絡先を一枚のメモに統合し、更新履歴を残します。これにより、誰がいつ何を判断するかが可視化され、縦覧や転用審査の段階で“言った・言わない”を避けられます。

公告・縦覧

自治体が申出内容を公告し、一定期間、住民や関係者の意見提出を受け付けます。
ここでは、目的・影響・対策をA3一枚で説明する資料を用意し、計画の必要性、営農や生活環境への配慮、交通・排水・緑地等の具体策をわかりやすく示すことが肝要です。
意見が提出された場合は、事実関係の確認→技術的評価→対応方針(設計変更・緩和措置・説明の追加)の順に記録化し、自治体との協議で回答案を整えます。縦覧対応の質は、その後の決定や許認可の条件に直結します。

除外決定

市町村が除外の可否を決定し、条件付きで承認されるケースもあります。
条件は、緑地の設定、排水の負荷低減策、道路の歩行者安全(歩道縁石・横断動線)、景観配慮(色彩・高さ抑制)などが典型です。決定通知を受けたら、付された条件を設計図書へ反映し、以降の申請(転用・開発)と完全に整合させます。不許可の場合は、規模縮小、配置転換、用途変更、時期変更といった代替案を速やかに再設計し、次期受付へ備えます。

転用(農地転用許可)

除外決定後、農地法の転用許可に進みます。
自己利用は4条、権利移転を伴う場合は5条が中心で、「申出時の計画」と同一条件で審査されるのが原則です。
提出書類は、公図・位置図、地権者同意、配置・排水計画、資金・工程の概略、(必要に応じ)土地改良区の意見書など。審査では、農地としての適性喪失の程度、代替可能性、周辺営農への影響が問われます。ここで設計がぶれると差戻しの要因になりますので、前段の条件(緑地・排水・交通)を図面と数量で確実に引き継ぎます。

他法令(開発許可・建築確認 等)

転用許可後、面積・用途・造成の有無等の基準に応じて都市計画法の開発許可が必要となる場合があります(要否・閾値は自治体差あり)。開発許可では、道路接続、上下水道能力、雨水処理、環境負荷、景観などインフラ・環境面の適合が中心評価軸です。開発許可と建築確認の前後関係も地域運用に従うため、“設計の最終版”をどの段階で固めるかをスケジュールに明記します。道路占用や河川占用、屋外広告物、景観条例など、関連許認可は工程表の同一行に紐づけて管理し、重複照査で手戻りを防ぎます。

事前協議メモ

論点を一枚に集約

位置・規模・用途・排水・交通・用水路・環境を一枚で可視化し、決裁線を明確にします。担当部署・担当者・協議日・合意点・未決点・次アクションを記録し、全員が同じ図を見て話す状態を維持します。

書式と図面の質

配置・断面・排水計画は縮尺・凡例を統一し、公共下水未整備なら合併処理浄化槽案計画規模縮小案を比較図で提示します。用排水路の管理者特定線形の代替案は早期に形にします。

スケジュール設計

年1回受付の逆算

年1回受付なら申出→決定で1年スパンを前提に、開発設計と同調させます。早期に地権者代表を選任し、境界確認地役権の有無を整理します。

三手続の要点(比較)

手続主目的主担当受付の傾向主な審査観点代表資料
農振除外区域の変更市町村(農政)年1〜数回営農への影響、代替農地位置図、事業計画、意見聴取
農地転用用途の変更農業委員会通年(締切あり)必要性、適正利用公図、同意、配置・排水
開発許可行為の適否都市計画通年道路・上下水・環境設計図書、配慮書

表の理解を補うと、農振除外は地域方針との整合転用は個々の土地利用の適正開発許可はインフラ・環境への負荷が中心。誰が何をいつ判断するかをメモで可視化し、待ち時間の短縮を図ります。

よくある詰まりと先回り

下水未整備

店舗や集合住宅など衛生設備前提の用途なのに下水がない場合、合併処理浄化槽の技術資料と維持管理体制を提示します。

集積方針との抵触

担い手の営農計画と衝突する場合は、規模縮小・配置転換で影響最小化の案を併記します。

用排水付替え

関係者が多いので、管理者特定→現況写真→線形比較図の順で合意形成を進め、工期・費用分担の目安も初期に共有します。

リスク管理

代替案と費用負担の見える化

不許可時の時期変更・用途変更の選択肢、道路拡幅・緑地確保の費用感を早期に描き、住民説明資料(A3一枚)で目的・影響・対策を明確化。感情的反発を避け、論点の土俵を整理します。

まとめ

提出順の厳守×並行協議で年単位の短縮が可能です。当事務所は、事前協議メモ作成、A3住民説明資料、年次タイムライン設計、用排水路の管理者特定・図面チェックまで伴走します。「農振除外の相談」と明記し、所在地・面積・想定用途・希望スケジュールをご連絡ください。

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