自筆証書遺言の「関係遺言書保管通知」と「死亡時(指定者)通知」

「法務局に預けると通知が来る」と聞いたけれど、関係遺言書保管通知と死亡時(指定者)通知の違いが分からない——そんな声をよく伺います。本稿は、初めての方にも伝わる言葉で、通知の意味・届く相手・届くタイミング・通知に書かれる内容を整理。相続開始後に“遺言が埋もれない”仕組みを、実務の流れに沿ってやさしく解説します。
関係用語を整理
「関係遺言書保管通知」とは
相続開始後、相続人等の誰かが遺言書の閲覧や遺言書情報証明書の交付請求をしたとき、その他の相続人等に「法務局に遺言が保管されています」と知らせる仕組みです。検認(家庭裁判所の手続)が不要な代わりに、関係者全員へ存在を周知する“呼びかけ”の役割を果たします。
「死亡時(指定者)通知」とは(=指定者通知)
遺言者が生前に希望した場合に限り、遺言者の死亡が確認されたとき、遺言者があらかじめ指定した人に「法務局に遺言が保管されています」と知らせる仕組みです。
2023年10月の運用変更以降は、通知先を最大3名まで、しかも相続人等に限らず指定できます。
遺言の存在を誰にも告げていなかった場合でも、埋もれにくくなりました。
※保管制度は有効性を保証する制度ではありません。内容の適法性・実現可能性は別途の設計が必要です。
何が通知され、何は通知されない?
通知に書かれること
・遺言者の氏名/出生の年月日
・遺言が保管されている法務局の名称
・保管番号
通知では分からないこと
通知では本文(誰に何を渡すか等)は分かりません。内容を確認するには、相続人・受遺者・遺言執行者などの関係相続人等が、法務局で閲覧または遺言書情報証明書の交付を受けます。
いつ届く?流れで理解する
関係遺言書保管通知が出るタイミング
相続人等のうち誰か一人が、法務局で閲覧や遺言書情報証明書を請求したあとに、その他の相続人等へ送られます。相続人の一部だけが遺言の存在を知ったまま手続が進む事態を防ぎます。
死亡時(指定者)通知が出るタイミング
遺言者の死亡が役所の記録で確認された時点で、遺言者が指定した通知先(最大3名)へ送られます。
通知先が相続人等でない場合、遺言本文の閲覧はできない点に注意(相続人等に情報をつなぐ“合図”として機能します)。
最小限の比較(必要箇所のみ)
| 通知名 | だれに届く? | いつ届く? | 分かること |
|---|---|---|---|
| 関係遺言書保管通知 | 相続人・受遺者・遺言執行者などその他の相続人等 | 関係者の誰かが閲覧/情報証明を請求したあと | 遺言者の氏名・生年月日/保管法務局名/保管番号 |
| 死亡時(指定者)通知 | 遺言者が生前に指定した人(最大3名) | 死亡が確認された時点 | 上記と同じ(本文は非開示) |
通知先の選び方
指定者通知の相手は、「確実に情報を受け取り、相続人等へ確実に伝えてくれる人」を基準に。
家族内の連絡役、遺言執行者予定者、事務に強い親族、信頼できる第三者などが候補です。
相続人等でない人を指定した場合は、本文を直接は閲覧できないため、通知を受けたら誰に連絡・引き継ぐかを決めておきましょう。転居・連絡先変更に備え、変更届で通知先情報を更新できる体制にしておくと安心です。
成功例/失敗例
成功例:通知の“二段構え”で迷いなし
Cさんは遺言執行者予定の姪と、家族の連絡役の長男を指定者通知の宛先に。
相続開始後、姪に死亡時通知が届き、法務局で遺言書情報証明書を取得。
すると自動的に関係遺言書保管通知が他の相続人にも送られ、全員が内容確認へ進めました。
結果、初動の混乱がなく、相続手続がスムーズに。
失敗例:通知先が1名・相続人外で滞る
Dさんは生前、家族に言いづらく相続人ではない友人1名のみを通知先に指定。
死亡時通知は届いたものの、友人は本文の閲覧ができず動けないまま時間が経過。
最終的には相続人の一人が戸籍集めから遺言の所在を突き止めるまで手続が停滞しました。
指定者通知は“合図”に過ぎないことを意識し、誰にどう引き継ぐかを決めておく大切さが分かる例です。
よくある質問(Q&A)
Q. 通知はどうやって届きますか?
A. 原則、郵便等の書面で届きます(メールではありません)。受け取りやすい宛先にしておくことが肝心です。
Q. 指定者通知の宛先は後から変えられますか?
A. 変更届で追加・変更が可能です(生前)。転居や家族関係の変化に応じて見直しましょう。
Q. 通知で遺言の“中身”は分かりますか?
A. 分かりません。相続人・受遺者・遺言執行者などの関係相続人等が、法務局で閲覧や遺言書情報証明書の交付を受けて内容を確認します。
Q. 保管制度を使うと絶対に有効な遺言になりますか?
A. いいえ。法務局は主に外形的なチェックを行い、内容の有効性は保証しません。財産特定や遺留分配慮などは別途の設計が必要です。
Q. 誰に指定すべきか迷います
A. 家族の連絡動線や、相続の“現場役”になる人を基準に。迷ったら、遺言執行者を先に決めてその方を含めるのが無難です。
まとめ
通知は、
1)関係遺言書保管通知=「だれかが動いたら、みんなに伝える」安全ネット。
2)死亡時(指定者)通知=「亡くなったら、合図を出す」起点作り。
この二段構えで“遺言が見つからない”を防ぎます。通知先は最大3名まで柔軟に設計し、変更届で最新の連絡先を維持。本文は通知では分からないため、閲覧/情報証明へ迷わず進める流れを家族で共有しておきましょう。
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