「宅建業免許の取得を進めるには、まず何から整えればいいですか?」という質問をいただきますが、
「器(事務所)」
「人(専任宅建士)」
「ルール(欠格事由)」
を一本の線でそろえることがその答えです。
この3要素のどれか一つでも欠けると申請は止まりやすいです。
本コラムでは、この三点を最短で抜け漏れなく整える方法を整理します。
宅建業免許の取得要件の全体像
宅建業免許は、「実体のある事務所があり、そこに専任で常駐する宅地建物取引士(以下、宅建士)が必要数そろい、さらに欠格事由に当たらない」ことが確認できれば、大枠をクリアできます。
ここでの専任とは、「その事務所への常勤性が認められ、他社の肩書や兼業で実態が空洞化していない状態」を指します。宅建士とは、宅建士試験の国家試験に合格し取引士証の交付を受け、重要事項の説明・書面への記名押印などの独占業務を担う資格者のことです。
事務所要件をやさしく整理
事務所は場所の実体”と“業務の実体”が両方あることが前提です。
机・書庫・固定電話(または連絡体制)・標識(免許番号等の表示)・帳簿(取引の記録)といった基本装備がそろい、継続的に来客対応・書類管理ができる空間である必要があります。
免許区分は知事免許(1都道府県内)/大臣免許(2都道府県以上)で分かれ、どちらも有効期間は5年です(更新制)。
自宅兼用事務所の「入口・動線」の考え方
自宅兼事務所で宅建業の認可を得るために、自治体によっては「自宅の入口と事務所の入口を明確に分けること」を求められることがあるため注意が必要です。全国一律の明文義務ではありませんが、生活スペースを通らずに事務所へ入れる独立した動線を重視する運用は広く見られます。集合住宅や自宅兼用の場合は、玄関→共用廊下→事務所の個室といった来客動線を図面と写真で示し、入口付近の掲示(商号や標識)も整えておくと差し戻しを防げます。
事務所とは、継続的に宅建業を営む拠点を意味し、本店・支店ごとに要件を満たす必要があります(“名ばかり出先”は不可です)。
免許区分と事務所の関係(理解の助けに小表)
| 観点 | 知事免許 | 大臣免許 |
|---|---|---|
| 対象 | 1都道府県内にのみ事務所 | 2都道府県以上に事務所 |
| 申請先 | 本店所在地の都道府県 | 本店所在地の国土交通大臣(地方整備局等) |
| 有効期間 | 5年(更新制) | 5年(更新制) |
専任宅建士の配置
専任宅建士は事務所ごとに「宅建業務に従事する者の5人に1人以上」を配置します。
ここでの業務に従事する者には、営業だけでなく契約・重要事項説明の準備・書類作成などに関わる内勤者も含まれます。従事者名簿とシフトで常駐実態を可視化しておくと、専任性の説明がスムーズです。
専任とは、現実に日常業務へ従事できる常駐状態を指します。
他社役員の兼務・長距離通勤で不在がち・週の大半が外出などは専任性に疑義が出やすい論点です。
配置の目安(人員変動がある方向けの目印)
- 従事者5人 → 宅建士1人以上
- 従事者10人 → 2人以上
- 従事者11〜15人 → 3人以上
繁忙期の最大人数で逆算し、余裕を1名上乗せしておくと安全です。
欠格事由をコンパクトに理解
欠格事由は、会社・役員・政令使用人(本店・支店の統括者)等に、業務の適正を損なう事情がないかを確認する基準です。実務で頻出なのは、一定の刑罰・行政処分の直近歴、暴力団関係、免許取消関与と経過年、破産・解散の整理状況、虚偽申請など。役員や関係会社の履歴も見られます。
欠格事由とは、免許を与えられない具体的事情の総称で、過去の取消からの年数や罰金・禁錮の有無などが代表例です。ここは個別事情で結論が分かれる領域なので、気になる点があれば事前相談の記録を残しましょう。
申請前のチェックリスト
ここまでの要点を一文にすると、「事務所の実体→専任宅建士→欠格事由クリア」を同時並行で可視化するのが最短です。
| 書類 | 何を証明? | 審査の着眼点 |
|---|---|---|
| 賃貸借契約・使用承諾 | 事務所の使用権原 | 住居専用制限の有無・転貸禁止・期間 |
| 写真・レイアウト図・入口掲示 | 独立性・導線の実在 | 生活スペースを経由せず入れるか、掲示の有無 |
| 従事者名簿・シフト | 従事者数の根拠 | 「5人に1人」の根拠・雇用区分の明確化 |
| 宅建士証・登録事項証明 | 資格の実在 | 有効期限・氏名住所の一致 |
| 役員一覧・誓約書 | 欠格事由に該当しないことの確認 | 直近処分歴・暴排誓約・虚偽の有無 |
よくある“つまずき”ポイント
①自宅兼用の独立性不足
玄関→共用通路→事務所の個室という導線を確保し、入口掲示と室内標識、施錠可能な書庫、来客対応スペースを写真で示すと安定します。
②専任宅建士の専任性に対する疑義
名刺・登記・SNSプロフィールに他社肩書が残ると専任性に疑義が出ます。
就業規則・雇用契約・社会保険の一本化で裏づけを用意しましょう。
③欠格事由の確認不足
過去の取消関与や罰金前歴などは経過年や関与度で結論が変わるため、所管への事前照会メモを残しておくと後々効きます。
免許取得後の対応への準備
免許は取得して終わりではなく、5年更新と各種変更手続きが必要です。
商号・役員・事務所移転・専任宅建士の交代は届出対象です。普段から帳簿・35条書面(重要事項説明書)・37条書面(契約書面)の保存と整合をそろえておくと、更新時の負担がぐっと軽くなります。
35条書面とは、契約前に交付する重要事項説明書のこと、37条書面とは、契約成立時に交付する最終の契約書面のことです。
まとめ
自宅兼用でも前に進めますが、自治体によっては「入口を自宅用と事務所用で分ける」運用があるため注意が必要です。少なくとも生活スペースを経由しない独立導線と掲示・書庫・来客体制を写真と図面で示す準備が近道です。
当事務所では、事前診断→導線・掲示の証拠づくり→宅建士配置→申請書類の束ね方まで現場目線で伴走します。
「この物件、間取りで大丈夫?」「専任宅建士はどうすれば認められる?」という段階からお気軽にご相談ください。


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