飲食店営業許可の手引き:内装工事前に知っておく設備基準と検査の流れ

はじめて飲食店を開業する方に向けて、保健所の営業許可を“ムダなく最短で”取得するための道筋を整理しました。
このコラムでは、工事着手前に押さえるべき設備基準と図面づくりの要点、食品衛生責任者の手配、事前相談から施設検査までの具体的な進め方、そして開業までのスケジュールと費用感を、やさしい言葉で丁寧に解説します。書式の作成だけでなく、現場運用のしやすさまで見据えて準備することが、スムーズなオープンの近道です。
許可取得のロードマップ
手続き全体像と逆算の考え方
飲食店の許可は、
(1)計画相談
(2)図面作成
(3)内装工事
(4)事前確認
(5)申請
(6)施設検査
(7)許可
の順で進みます。
重要なのは、開店日から逆算して「人(採用・教育)」「物(機器・什器)」「書類(図面・申請)」を並走させることです。たとえば、食品衛生責任者の受講枠は繁忙期に埋まりやすく、工期が順調でも資格が未取得だと検査後の営業開始が遅れます。図面は清掃・消毒・動線を言語化した“設計図”であり、完成後に直しづらい寸法や配管位置は先に合意を取るべき論点です。資金計画も同様に、設備発注・家賃・保証金・人件費・広告費の支払い時期を見える化し、開店直後の運転資金が確保できる形で段取りを組みます。
図面・設備基準(シンク・手洗い・動線)
シンク計画(三槽・消毒・区分)
シンクは洗浄・すすぎ・消毒を区分できるよう原則三槽で計画します。
寸法は使用する器具の最大サイズを基準にし、消毒槽に十分な湯量が供給できる給湯能力を確保します。
野菜や生肉・魚の下処理を行う場合は、交差汚染を避けるために用途別の水回りや調理台を設け、色分けや掲示で運用ルールを明確化します。
連続的な作業を想定し、作業者の動きが無理なく直線的に流れるよう配置することも大切です。
蛇口は肘やレバーで操作できるタイプにすると手指衛生が保ちやすく、後の検査でも評価されます。

手洗い・衛生設備の配置
手洗い器は調理場と客席(提供形態に応じて)に設置し、他用途と兼用しない専用のものを用います。
石けん・消毒液・ペーパータオル・ごみ箱をセットで設置し、前に物を置かないスペースを確保します。客席側の手洗いは導線上で迷わない位置に置き、表示を付けると衛生的な運用につながります。床は耐水で、排水口は目皿や防臭トラップを備え、清掃道具の保管場所も動線から外して確保します。害虫・ねずみ対策として、配管周りや建具の隙間をふさぎ、搬入口や排気口には網やブラシで侵入を防ぐ工夫を図面に反映しましょう。
動線設計(交差防止・区画)
動線の基本は「汚れ→洗浄→清潔」の一方通行です。仕入れ・下処理・加熱・盛付・提供の各段階で、食材や器具、人の動きが交差しないように区画します。テイクアウト中心か、コース提供中心か、カウンター主体かで望ましい動線は変わります。混雑時のピーク動作を想定して、仮置きスペースや配膳・下げ場の位置、戻り食器の通路幅まで数値で検討しましょう。冷蔵・冷凍庫は必要容量だけでなく開閉頻度と補充導線に配慮します。消毒液・洗剤の希釈・保管場所や、アレルゲンの表示・区分保管の方法も、図面段階から組み込むと運用が安定します。
| 設備・項目 | 最低目安のポイント | よくあるNG |
|---|---|---|
| 三槽シンク | 洗浄・すすぎ・消毒を区分、十分な給湯 | 器具サイズに対して槽が小さい |
| 手洗い器 | 調理場・客席に専用器各1以上、石けん等セット | 他用途と兼用、前面が物でふさがる |
| 床・排水 | 耐水・勾配・防臭トラップ・清掃容易 | 勾配不足、目皿無し、ぬめり発生 |
| 動線 | 汚れ→清潔の一方通行、交差防止 | 下処理と盛付が近接、逆流動線 |
食品衛生責任者と提出書類
食品衛生責任者の取得と配置
営業者本人または従業員から食品衛生責任者を選任し、講習を受講して資格を取得します。
人気期は予約が取りにくいため、物件確定の段階で日程を押さえておくと安全です。
責任者は日々の衛生管理の中心で、手洗いの徹底や温度管理、清掃・消毒、アレルゲン管理、従業員教育の実施と記録の整備を担います。交代や休暇時の代行者を決め、掲示や名札、マニュアルで役割を可視化しましょう。検査では資格証の提示や、日常の管理記録の様式(清掃表・温度表・体調チェック)を見せられると、運用の実効性を伝えられます。
申請書類セットと作成のコツ
申請書には、施設の平面図・機器配置図・給排水・換気・照明・ゴミ保管の方法、取り扱い品目や従業員数などを記載します。井戸水や貯水槽を使用する場合は水質検査成績書、特殊な設備を用いる場合はカタログや仕様書を添付します。賃貸物件では管理規約や使用承諾との整合性が必要です。図面は縮尺・方位・寸法を明示し、写真と対応づけると理解が早まります。提出直前に、名称・住所・日付の表記揺れを名寄せし、印影やページ通し番号、差替履歴を整えると、補正の芽を摘むことができます。
事前相談から現地検査まで
事前相談の活用と図面チェック
工事前に図面と設備リストを持参し、保健所で事前相談を受けるのが最短ルートです。自治体により運用の細部が異なるため、三槽シンクの寸法、手洗いの数、給湯能力、動線の考え方など、解釈の差が出やすい項目を中心に確認します。相談で得た指摘はその場でメモ化し、設計・施工側と速やかに共有します。可能であれば、主要機器の設置写真やカタログを添付した“確認用セット”を作り、後日の検査でも同じ説明ができるようにしておくと効率的です。相談の予約方法や持参物は各庁の案内に従い、担当者名と連絡先を控えておくと補正対応が迅速になります。
施設検査の流れと合格のコツ
検査当日は、図面どおりに施工されているか、清掃のしやすさ、手洗い器の使い勝手、冷蔵・冷凍設備の温度管理、害虫・ねずみ対策、表示類の整備が確認されます。合格のコツは、日常の運用を“実演できる状態”に整えることです。清掃表や温度記録のサンプル、アルコール消毒液の希釈方法、アレルゲン管理の説明資料、ゴミの一時保管場所の写真などを用意し、質疑には簡潔に根拠を示して答えます。軽微な指摘は即日是正できるよう、工具や部材、表示ステッカーを持参すると、再検査を避けやすくなります。検査官は「営業開始後も安全に回せるか」を見ている点を意識しましょう。
開業スケジュール例と費用感
8週間のモデルスケジュール
物件確定からオープンまでを8週間で想定した例を示します。
実際は規模や工法で前後しますが、逆算管理の参考にしてください。
並行して、メニュー確定と衛生管理手順(加熱温度・保存温度・アレルゲン表示)を文章化し、開店初日から運用できるよう準備します。
主な費用の目安と予備費
費用は、申請手数料のほか、図面作成・工事・機器購入・水質検査・消耗品・表示類の作成など多岐にわたります。内装と設備は業態や素材で大きく変わりますが、床・壁の耐水化や給排水のやり直し、電源容量の増強はコストがかかりがちです。中古機器を活用する場合でも、清掃・点検・保証の有無を含めた実質価格で比較しましょう。予備費は全体の1〜2割を目安に確保し、検査での軽微な是正、メニュー変更に伴う備品追加、開店直後の追加スタッフのシフト増に備えると安心です。保健所の指摘が入った場合に即応できるよう、印刷物や表示ステッカーのスペアも用意しておくと手戻りが減ります。
| 費目 | 例 | 備考 |
| 申請・検査関連 | 申請手数料、水質検査費 | 自治体・水源で変動 |
| 内装・設備 | 床耐水化、三槽シンク、手洗い器、給湯器 | 設備仕様で幅あり |
| 機器・備品 | 冷蔵・冷凍庫、加熱機器、記録簿・表示類 | 中古活用時は保証確認 |
| 教育・運用 | 食品衛生責任者講習、衛生備品 | 開店後も継続費用発生 |
まとめ/ご相談のご案内
このコラムが、工事前に押さえておくべき基準と、許可取得までの具体的な道筋を描く一助になれば幸いです。アクシスサポート行政書士事務所では、図面レビュー、事前相談の同席、申請書の作成、検査立会い、指摘是正の段取りまでを一括でサポートします。店舗の個別事情(テイクアウト中心、深夜営業、特殊設備の導入など)に応じた最適解をご提案し、安心してオープンの日を迎えられるよう伴走いたします。まずはお気軽にご相談ください。
結論ポイント
- 工事前の事前相談で図面・設備の解釈差を解消し、最短ルートで許可へ進む。
- 三槽シンク・手洗い器・床排水・給湯能力は“後から直しにくい”ため設計段階で確定する。
- 食品衛生責任者は早期に受講予約し、清掃・温度・体調の記録様式を開店前に整える。
- 施設検査は“運用が安全に回るか”が焦点。表示類・記録・是正手順をその場で示せる準備をする。
- スケジュールは開店日から逆算し、工事・申請・採用・教育を並走管理する。
- 費用は予備費1〜2割を計上し、軽微な是正や運用開始後の追加コストに備える。
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