相続税シミュレーションは「相続税がかかりそうか」を早めに見える化する作業

相続税シミュレーションは、相続が発生したときに 相続税の申告が必要になりそうか、納税資金をどれくらい準備すべきかを、概算で把握する作業です。
国税庁は、正味の遺産額が基礎控除額を超える場合に、相続税の申告・納税が必要になる考え方を示しています。

※土地の補正や特例の適用で金額が大きく変わるため、最終判断は税理士等の専門家の確認が必要です。


最初に押さえる相続税の基礎控除

相続税の基礎控除額は、次の式です。

基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

国税庁は、相続放棄をした人がいても、法定相続人の数は「放棄がなかったもの」として数えるとしていますので相続放棄があった場合は基礎控除の計算に注意が必要です。

ステップ1:相続人の数の確認

  1. 戸籍で家族関係を確定
    被相続人の出生から死亡まで連続した戸籍(除籍・改製原と、配偶者・子など関係者の現在戸籍を集めます。法務局の「法定相続情報一覧図」を作ると後の手続きも楽です
  2. 配偶者の有無をチェック(婚姻中のみ。内縁は含まれません)
    配偶者は常に相続人です。内縁の配偶者は相続人になりません。
  3. どの順位が相続人かを決める
  • 第1順位:子(認知子・養子含む)。子が先に死亡なら孫以降が代襲(再代襲あり)。
  • 第2順位:父母など直系尊属(第1順位がいないとき)。
  • 第3順位:兄弟姉妹(第1・2順位がいないとき)。兄弟姉妹が先に死亡なら甥姪が1代限りで代襲
  1. 胎児・死亡時点の生死を反映
    相続開始時に胎内の子は生まれたものとみなす(出生が前提)。
  2. 「いなかったもの扱い」になる人を除外
    相続放棄をした人は最初から相続人でなかった扱い。欠格(民法891条に定める犯罪等)・廃除がある場合も除外

ステップ2:財産を棚卸しする

相続税の判定は、財産を合計して、債務や葬式費用などを差し引いた「正味の遺産額」を作るところから始まります。国税庁も、正味の遺産額の考え方に「債務・葬式費用の控除」を含めて説明しています。

棚卸しの最初の対象は、次の4つです。

  • 預貯金(通帳・ネットバンキング残高)
  • 不動産(土地・建物。固定資産税の課税明細など)
  • 有価証券(証券口座の残高)
  • 借入金などの債務、葬式費用(領収書)

ステップ3:土地評価額の算出

土地評価は、相続税シミュレーションで最も差が出やすい部分です。国税庁は、路線価がある地域は路線価を使い、路線価がない地域は倍率方式を使う整理を示しています。

路線価方式で計算

路線価は、国税庁が公開している「財産評価基準書(路線価図)」で確認します。国税庁は、路線価を 「道路に面する標準的な宅地の1㎡あたりの価額(千円単位)」 と説明しています。

土地の概算評価=路線価(円/㎡)× 面積(㎡)

路線価は、国税庁の「路線価図・評価倍率表(財産評価基準書)」で地図から地点を選んで無料で確認できます(https://www.rosenka.nta.go.jp/)。
ここで概算計算では、奥行などに応じた補正(奥行価格補正率など)は一旦使わずに概算します。
奥行価格補正率とは、路線価で土地を評価するとき、道路からの奥行の長さ(標準奥行との比)に応じて単価を増減させるための補正係数のことで、形が特殊な土地、間口が狭い土地、奥行が長い土地は、この補正を受けるため概算と実額がずれやすくなります。


倍率方式で計算(路線価がない地域)

路線価が定められていない地域では、国税庁が示す倍率方式を使います。

土地の概算評価=固定資産税評価額 × 評価倍率

評価倍率は、国税庁の「評価倍率表」で確認します。国税庁は、評価倍率表は路線価がない地域の土地評価に用いると説明しています。

建物の評価は固定資産税評価額を使う

建物は、固定資産税評価額を基に評価する整理が一般的です(課税明細に記載があります)。
土地ほど補正の論点が多くないため、シミュレーションの初期段階で扱いやすい項目です。


ステップ4・ステップ5:債務・葬式費用を控除し、基礎控除と比較

国税庁は、相続税がかかるかどうかの説明で、遺産総額から非課税財産、葬式費用、債務などを控除して「正味の遺産額」を作り、基礎控除と比較します。

  • 正味の遺産額(概算)=財産合計 − 債務 − 葬式費用
  • 課税遺産総額(概算)=正味の遺産額 − 基礎控除

この時点で、課税遺産総額がプラスなら、申告が必要になる可能性が高くなります。


ステップ6:税額を概算する

国税庁は、相続税の総額を計算する手順として、課税遺産総額を法定相続分で仮に分けて税率を当て、合計する流れを示しています。

相続税の計算例(法定相続人2名(配偶者+子1人))

  • 正味の遺産額1億2,000万円/相続人=配偶者+子1人(計2人)
  • 基礎控除=3,000+600×2=4,200万円 → 課税遺産総額=7,800万円
  • 法定相続分で按分:配偶者3,900万円・子3,900万円 → 速算表20%−200万円で各580万円、合計1,160万円
  • 実取得が法定どおりなら按分後:配偶者580万円・子580万円配偶者軽減で配偶者分は0円(子は580万円が目安)。※配偶者軽減で0円でも申告が必要になるケースがあります

概算が大きく変わりやすい要素

次の制度は、相続税の金額を大きく変えることがあります。概算と実額がずれやすい理由にもなります。

死亡保険金の非課税枠
国税庁は、相続人が受け取る死亡保険金について 「500万円×法定相続人の数」 の非課税限度額を示しています。

配偶者の税額軽減
国税庁は、配偶者が実際に取得した正味の遺産額が 「1億6,000万円」または「法定相続分相当額」 までなら、配偶者に相続税がかからない制度を示しています(要件あり)。

小規模宅地等の特例
国税庁は、居住用・事業用など一定の宅地等について、区分ごとに一定割合で評価額を減額する制度を示しています(要件が複雑です)。

これらは「使えるかどうか」の判定が難しいため、概算段階では“影響が大きい制度がある”ことを把握し、専門家へつなぐ準備を進めることが現実的です。


申告期限は10か月なので、概算は早めに作る価値がある

国税庁の案内では、相続税の申告期限は 「相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月目の日」 です。
土地評価、遺産分割、添付書類の準備には時間がかかるため、概算を早めに作ることが重要です。

税の個別相談は税理士へ

当事務所は、相続手続の支援(相続人調査、戸籍収集のサポート、財産の整理、遺産分割協議書などの書類作成支援、金融機関・役所提出書類の整備)を行います。相続税の計算、節税提案、申告書の作成など「税の個別相談」に該当する内容は税理士の業務のため、当事務所は提携税理士・紹介先税理士へ確実につなぎます。


最後に

当事務所は、相続税シミュレーションの前段階で必要になる「資料の集め方」「財産の一覧化」「土地の路線価・倍率方式の調べ方(概算のための整理)」を、一般の方向けに丁寧に案内します。税理士への引継ぎが必要な場合は、当事務所が資料を整理したうえで連携します。

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