はじめに
自筆で書く遺言(自筆証書遺言)を法務局に預けられる制度として『自筆証書遺言保管制度』が2020年に始まりました。自筆証書遺言の欠点を補完するために始まったこの制度ですが、すべての欠点を補完できているわけではありません。
よくある誤解は「法務局が保管してるんだから、中身まで保証してくれる」「家族はいつでも見られてしまう」というもの。この自筆証書遺言の弱点をどこまで補ってくれるのかについて説明します。
自筆証書遺言保管制度のポイント
- 検認が不要になります。 法務局に預けた自筆証書遺言は、保管制度を使用していない遺言書を開封する際に必要な家庭裁判所での「検認」が不要になります。
- 遺言書の内容の有効性まで保証はしません。 法務局が見るのは“外形的な形式(押印がされているか等の見た目のルール)”を確認するだけで、条文の内容が正しいかどうかの保証はしません。
- 相続後に家族が確認できます。 亡くなったあと、相続人などが「閲覧」や「遺言書情報証明書」の交付を受けて、各種手続に使えます。
- 相続人に自筆証書遺言の存在を通知してくれます。亡くなったあと、指定した相続人に対して、自筆証書遺言が保管されている旨の通知されます。
自筆証書遺言保管制度で「してくれること」
- 原本を安全に保管してくれます(紛失・隠匿・改ざんのリスクが下がります)。原本は50年間保管されます。
- 画像データ化して記録してくれます(見つけやすくなります)。画像データは150年間保存されます。
- 形式(外形)チェックをしてくれます。例:全文・日付・氏名を自書しているか、押印があるか など。
- 相続が始まったら、相続人などが閲覧や証明書の交付を受けられます。
自筆証書遺言保管制度では「しないこと」
- 中身の法律判断はしません。 たとえば遺留分への配慮が十分か、書きぶりがあいまいで争いにならないか、といった“内容”は見ません。
- 代理申請や郵送は不可。 申請は遺言者本人が来庁するのがルールです。
- (相続前)家族が中身を見ることは不可。 本人以外が内容を見られるのは、亡くなったあとです。
どこまで「自筆遺言の弱点」を補ってくれる?
- 見つからない問題を緩和:法務局で探せる状態になり、相続人が証明書や閲覧で内容を確認できます。
- 紛失・改ざんリスクを低減:原本保管+画像記録で、なくしたり書き換えられたりしにくくなります。
- 重大な形式ミスの“持ち込み”を減らす:申請時に外形チェックがあるため、日付がない、署名がない等の明らかな形式不備に気づきやすくなります。
自筆証書遺言保管制度の手続の流れ
- 自筆証書遺言を作成する。
- 自筆証書遺言の保管手続きの予約をする。
- 本人が来庁して申請(本人確認書類と遺言書原本を持参)。
- 法務局でスキャン・保管、保管証を受け取る。
- 相続開始後:相続人などが閲覧や遺言書情報証明書の交付を請求 → 銀行手続や名義変更などに使用。
申請に必要なもの
- 遺言者ご本人の来庁(代理・郵送は不可)
- 本人確認書類(運転免許証など)
- 遺言書の原本(「全文・日付・氏名」を自書、押印)
- 予約方法や細かい持ち物は、各法務局の案内に従ってください。
相続が始まったあとに家族ができること
- 相続人・受遺者・遺言執行者などは、法務局で閲覧(モニター/原本)や遺言書情報証明書の交付を受けられます。
- 家庭裁判所による検認なしで金融機関や不動産の手続に進みやすくなります。
よくある勘違い・失敗例
- 「預けた=内容も合法」
→ いいえ。法務局は形式しか見ません。内容の保証はゼロです。文章があいまいだと争いになります。 - 「家族はいつでも見られる」
→ いいえ。相続が始まる前は、原則として本人だけが手続できます。 - 「専門家に代理で任せればOK」
→ いいえ。ご本人の来庁が必須です(体調や距離の問題がある方は、公正証書遺言の利用も検討しましょう)。
料金(公的手数料の目安)
- 保管申請:1通 3,900円
- 閲覧(モニター):1回 1,400円
- 閲覧(原本):1回 1,400円
- 遺言書情報証明書の交付:1通 1,400円 など
※金額は法務省の手数料に基づきます。最新の公表数値をご確認ください。
※当事務所のサポート費用(報酬)の目安は、参考料金表をご覧ください。
自分でチェック(5つ)
- □ 遺言は法務局に預けた自筆のものである(自宅保管のままではない)
- □ 全文・日付・氏名を自書し、押印している
- □ 亡くなったあと、家族が閲覧や証明書の交付を受けられることを理解している
- □ 「保管=内容の保証ではない」と家族にも共有した
- □ 不安な条文(遺留分、特定の人に偏る分け方、負担を付ける贈り方 など)は専門家の文言点検を受ける
自筆証書遺言保管制度をするか、迷ったらどうする?
- 遺言の文言点検(おすすめ)
遺言の内容についての曖昧な表現を具体化し、争いの芽を減らします。代替条項(AがダメならBに相続、など)も入れておくと安心です。 - 公正証書遺言の検討
本人の署名・押印・証人の立会いなど、方式面が強固になります。体調や移動の都合で来庁が難しい場合の選択肢にもなります。
まとめ
- 検認は不要ですが、内容の保証はありません。
- 法務局が確認するのは形式(外形)まで。条文の良し悪しは別途チェックしましょう。
- この制度は、なくさない・見つかる・形式ミスに気づけるという点で、自筆遺言の弱点をしっかり補います。仕上げは文言点検で。
- 自筆証書遺言の作成、保管制度の申請書の作成などについて当事務所でサポートさせて頂きます。お気軽にご相談ください。


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