相続の手続きで「戸籍一式を何部もコピーして、金融機関や法務局に都度提出…」というご負担をよくお聞きします。そこで頼りになるのが法定相続情報一覧図です。
これは、相続関係(だれが亡くなり、相続人がだれか)を法務局が確認し、一覧の“写し”として公的に整理してくれる書類です。戸籍の束を毎回出す代わりに、一覧図の写しを提出すれば足りるので、手続きがスムーズになります。
何が便利?——戸籍の束から「一枚」に置き換える
いちばんのメリットは、提出書類の軽量化と窓口での説明負担の軽減です。
戸籍の読み取りは慣れないと難しく、窓口で相続関係を説明するだけで時間がかかります。
一覧図なら家系の流れがひと目で分かるため、担当者との認識合わせが早くなります。
また、複数部をまとめて請求できるので、銀行・証券・保険・不動産登記など同時並行の手続きにも向きます。

※法廷相続情報一覧図のサンプルです。氏名は仮名です。
法定相続情報一覧図、どこで、どう作る?
作成は法務局(登記所)への申出で行います。
基本の流れは、①必要書類をそろえる→②一覧図の様式を作る→③登記所へ提出→④審査・交付です。
必要書類の考え方
「誰が亡くなり、どの相続人がいるか」を証明するため、被相続人(相続の対象となる財産を残して亡くなった人)の出生から死亡までの戸籍・除籍・改製原戸籍、それに各相続人の現在戸籍が必要になります。
住民票や除票で最後の住所を確認することもあります。ここでのポイントは、“抜け”のない収集です。戸籍が分かりにくいときこそ、一覧図で全体像を整える価値があります。
申出の実務
申出人(通常は相続人)が、法定相続情報一覧図(様式)と戸籍類の原本・写しを登記所へ提出します。
登記官が内容を確認できれば、「法定相続情報一覧図の写し」が交付されます。
手数料は原則無料で、必要通数をまとめて交付してもらえます。
郵送でのやり取りにも対応しており、遠方の方にも扱いやすい制度です。
何に使える?——用途を具体的にイメージする
不動産の相続登記、銀行口座の相続手続き、有価証券や保険金の請求など、相続関係の証明が必要な場面全般で活躍します。相手窓口の実務基準により、発行から一定期間内のものを求められることがありますが、一覧図そのものに法定の有効期限はありません。実務では発行日が新しい写しを数部持っておくとスムーズです。
一覧図・戸籍束・遺産分割協議書の違い
理解を助けるために、代表的な書類との役割の違いを表でまとめます。**結論は「一覧図は“相続関係の証明”、分割協議書は“分け方の合意”」**です。
| 書類 | 役割の中心 | 説明のしやすさ | よく使う場面 | 補足 |
|---|---|---|---|---|
| 法定相続情報一覧図 | 相続関係(誰が相続人か)の証明 | 高い(図式で一目) | 口座解約、相続登記の添付 | 法務局認証の写しを複数部交付 |
| 戸籍一式 | 相続関係の原始証明 | 低い(読み取りが難しい) | あらゆる相続手続の基礎 | 原本返却や写しの作成に手間 |
| 遺産分割協議書 | 分け方の合意内容 | 中(文案次第) | 名義変更、登記、払戻し | 相続人全員の署名押印が前提 |
遺産分割協議書とは:相続人全員でどの財産をだれが取得するかを合意し、文書化したものです。内容に不備があると手続きが止まるため、一覧図と併せて整合させます。
こんなときは特に有効——“並走”で時短するコツ
複数の窓口に同時進行で申請するなら、先に一覧図を整えて通数を確保しておくと、各窓口に同時提出できて時短になります。遺産分割がまだまとまっていなくても、相続関係の確認だけ先に済ませたい場面では一覧図先行が有効です。
また、被相続人の改製原戸籍が多く、戸籍束の読解が難しいケースでは、一覧図で骨格を見える化してから分割の相談に入ると、相続人間での誤解を減らせます。
法廷相続情報一覧図に関するよくある誤解
①法廷相続情報一覧図があれば遺産分割協議書はいらないというのは誤解です。
一覧図は「だれが相続人か」を証明するだけで、“誰が何をもらうか”の合意は別(遺産分割協議書)です。
②一覧図に有効期限があるというのは誤解です
法令上の有効期限は定められていません。
ただし相手先の運用で“発行後○か月以内”といった内部基準があるため、新しめの写しを用意すると安心です。
③戸籍収集は省略できるというのは誤解です。
一覧図を作るために戸籍一式は必要で、むしろ“一度だけ厳密に集めて、以後は一覧図で代替”と捉えるのが正解です。
作り方のツボ——失敗しない三つの視点
法廷相続情報一覧図とは「戸籍で相続関係を一度だけ厳密に確認し、以後の手続きを軽くするための公的ショートカット」です。実務でのコツを最小限の箇条書きで添えます。
- “出生から死亡まで”を揃える意識:転籍・改製をまたぐときは改製原戸籍を拾い忘れやすいです。
- 相続人全員の現在戸籍を確認:婚姻や離婚、養子縁組で相続人の範囲が動くことがあります。
- 一覧図の記載を“図として”丁寧に:名前・続柄・生没年月日などを読みやすく配置し、窓口の理解を助けます。
相続登記との関係——義務化時代の“必須アシスト”
2024年からの相続登記の申請義務化により、登記を先延ばしにしにくい時代になりました。
相続登記でも相続関係の証明が基礎になるため、一覧図をつくっておけば、そのまま登記の添付資料として使える場面が多いです。“登記+金融機関+保険”を一覧図で一気通貫にする設計が、これからのスタンダードです。
まとめ
法定相続情報一覧図は、「戸籍一式の読み込み」という相続のボトルネックを解消する道具です。相続関係の確認を一度で厳密に、その後の複数手続きを一覧図の写しで軽くする——この順番が、時間と手間のロスを最小化します。アクシス行政書士事務所では、戸籍収集→相続関係の確認→一覧図の作成→銀行・証券・保険・登記への横展開まで、やさしく・ていねいに伴走します。「いま何から始めればよい?」という最初の一歩からで大丈夫です。まずは状況をお聞かせください。あなたのご家族に合わせた最短ルートをご提案します。


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