生前贈与と遺言の上手な組み合わせ

生前のうちに財産をどう渡すかは、「今できること(生前贈与)」と「将来に備えること(遺言)」を両輪で設計するのがコツです。どちらか一方だけでは、家族構成の変化や資産の特徴に十分対応できないことがあるからです。今日は、身近な言葉で、無理なく実行できる組み合わせ方をお話しします。
まずは基本をおさえましょう
生前贈与と遺言は似ているようで役割が違います。違いをつかむと、どこを生前に進め、どこを最終的に遺言で担保するかが見えてきます。
生前贈与とは
生きている間に財産を無償で渡す行為です。契約が成立した瞬間に効力が出ます。
贈与契約書(贈与の内容を明文化する書面)を作っておくと、後日の誤解や課税上の疑義を避けやすくなります。
お金を移すだけでなく、管理の独立性(通帳やキャッシュカードを受贈者が管理すること)まで整えてこそ実態ある贈与として認められやすくなります。
遺言とは
亡くなった時点で効力が生じる最終意思の表示です。
公正証書遺言(公証役場で作る方式)にすれば、形式不備や紛失の不安が小さくなります。
誰に何をどの割合で渡すのかだけでなく、付言事項(家族へのメッセージ)を添えると、判断の背景が伝わり、納得感が高まりやすくなります。
組み合わせるメリットを理解する
生前贈与は負担の分散、遺言は最終調整の明確化に役立ちます。
例えば、自宅は配偶者へ遺言で確実に残し、金融資産は子へ生前に少しずつ移す、といった設計です。
事業をお持ちの方なら、株式は承継者へ段階的に贈与し、他の相続人には代償分割(誰かが多めに取得する代わりに金銭で埋め合わせる方法)を遺言で示すと、公平感と事業の継続性を両立しやすくなります。
教育費・結婚資金など目的が明確な支援は生前贈与、残りの全体配分は遺言で微調整、という役割分担も現実的です。
設計のステップを決める
思いつきではなく、「現状把握→意思の整理→実務の落とし込み」という順番で進めると、手戻りを防げます。
現状把握の進め方
まず、ざっくりで構いませんので資産と負債のリストを作成します。
不動産の利用状況(居住・賃貸・事業用)や口座の名義も確認します。ここでよく出るのが名義預金(家族名義でも実質は本人の資金)です。名義預金は後にトラブル源になりやすいため、早めの整理が安心です。
意思の整理のコツ
「必ずこうしてほしい部分」と「状況次第で調整できる部分」を分けて言語化します。
遺言には予備的遺言(第一受取人が先に亡くなった場合などの次順位指定)を入れて、想定外への備えも一緒に整えます。背景を伝える付言事項は、争いを減らす大切な潤滑油です。
実務への落とし込み
生前贈与は、資金移動・贈与契約書・通帳の管理体制をワンセットで行います。
遺言は財産目録を添付し、保険や不動産の記載を特定しやすい表現に整えます。
保険を活用する場合は受取人指定(保険金を受け取る人を契約で決めること)と遺言の内容を合わせておくと、資金手当てと公平感の両立に役立ちます。
注意したい法的・税務の要点
ここはトラブル回避の急所です。
制度は改正が入るため、最終判断は個別相談で確認しましょう。
遺留分への配慮
遺留分(法定相続人が最低限受け取れる取り分)を侵害すると、遺留分侵害額請求(不足分の金銭請求)を受けるおそれがあります。偏りが生じる設計をする場合は、
合理的な理由を付言事項で丁寧に説明し、代償金の原資(預金・保険)を確保しておくと実行段階がスムーズです。
贈与の実態を整える
名義だけ動かしても、実態が伴わなければ否認リスクが残ります。贈与後の管理主体、通帳・印鑑の保管、贈与契約書の日付・署名など、小さな手続きの積み重ねが最大の防御になります。
制度選択の考え方
暦年贈与(毎年コツコツ移す考え方)と相続時精算課税(生前のまとまった贈与を相続で通算・清算する仕組み)は、資産の種類・金額・将来の売却予定で向き不向きが変わります。評価変動しやすい資産や事業承継では、「いつ・いくら・誰に」の設計が結果を大きく左右します。迷うときほど、数年先までのキャッシュフローと税負担の見取り図を作りましょう。
よくある失敗を先回りで防ぐ
典型例は、生前に渡しすぎて老後資金が足りなくなるケース、不動産だけを特定の子に集中させて換金性と公平感が崩れるケース、自筆遺言の形式不備で効力に争いが出るケースです。対策は、老後の生活費の試算、公証役場での作成、代償金の原資確保の三点セットです。公証人(公正証書を作る中立の専門職)が形式面をチェックすることで、将来の不安を大きく減らせます。
家庭事情に合わせた“型”を持つ
二世帯・同居前提なら、自宅は配偶者から同居子へ遺言で承継の流れを指定し、同居しない子には計画的な金銭贈与で公平感を調整します。事業承継なら、株式や事業用資産を承継者へ段階的に贈与し、他の相続人には代償分割と保険の受取人指定で資金手当てを用意します。お一人暮らしなら、生前贈与は最小限に抑え、遺言で信頼できる人や団体へ明確に指定し、遺言執行者(遺言の内容を実行する権限者)を必ず指名します。専門職が就任すれば、手続の流れが分かりやすくなります。
今日からできる小さな一歩
まず、資産と負債の概略リストを作り、優先順位を三つだけ書き出してください。
次に、その理由を一言のメモで添えましょう。家族には詳細でなく方針だけを共有し、専門家との面談で具体化します。ここまでできれば、設計は半分完成です。
まとめ
生前贈与は“今”を整える道具、遺言は“将来”を約束する道具です。ふたつを組み合わせることで、家族の納得感と手続の確実性が一気に高まります。ただし、ベストな配分はご家庭の事情や資産の性質で変わります。アクシス行政書士事務所では、贈与契約書の作成、公正証書遺言の設計、代償分割の原資づくり、保険の受取人指定の整合確認までワンストップで伴走します。「うちの場合はどう組み合わせるのが一番いい?」という段階からで大丈夫です。
やさしく丁寧に整理のお手伝いをします。まずはお気軽にご相談ください。
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