まずは「法務」と「マーケ」を両立させる
会社名の決める際は、登記上問題ないか(法務)と覚えられて検索されるか(マーケティング)の両輪で考えることが重要です。どちらか一方だけだと後から付け替え費用や機会損失が大きくなりますので、最初から“通る・伝わる・見つかる”を同時に設計するのが近道です。
用語解説
- 商号(しょうごう):登記簿に記載される会社の名前です。ブランド名と同義に扱われがちですが、法務の当事者は登記名として見ます。
- 類似商号:同一住所で他人とまぎらわしい商号を使うことです。現在は登記上の同一商号・同一所在地でも登記自体は可能ですが、不正競争防止法や信用混同の観点でトラブルになり得ます。
- 商標:商品・サービスの目印です。J-PlatPatなどで検索し、他者の権利を侵害しないか確認します。
これらの違いを押さえると、後戻りの少ない名前づくりができます。
法的に「入れたほうがよい言葉」「入れなければならない言葉」
商号には、会社の種類を示す語を必ず入れます。配置は前後どちらでも構いません。
会社の種類(必須語)
- 株式会社/合同会社/合資会社/合名会社:いずれかを必ず商号に含めます(例:株式会社アクシスサポート/アクシスサポート合同会社)。
- 配置の自由:前株・後株のどちらも許容です。読みやすさとブランドの一貫性で選びます。
結論として、会社種別語は付属のパーツと割り切って、主役のネーミングに集中するのが効率的です。
法的に「避けたい/使えない」NGワード
商号に使える文字種は広い一方、業法上の専用語や公序良俗・誤認に当たる表現は避けます。以下は代表例です。
規制業種の専用語(許認可なしは基本NG)
- 銀行・信託・保険・証券・信金・信組など、金融・保険を想起させる語は、無関係事業での使用は誤認惹起としてアウトになりがちです。
- 医療・病院・クリニック・薬局等の語も、医療法・薬機法上の誤認につながるおそれがあります。
- 大学・学校などの学校教育法上の用語も、実体が伴わないと好ましくありません。
要するに、その言葉を見た第三者が「免許や認可がある」と信じてしまうかを基準に判断すると安全です。
誤認・公序良俗に関する表現
- 官公庁名や公共機関と誤解される名称(例:日本○○庁、○○市役所風など)。
- 差別・侮辱・反社会的と受け取られる語、著しく暴力的・猥雑な語。
- 他社の著名ブランドと紛らわしい表記(綴りを少し変えただけ等)は不正競争の火種になります。
まとめると、「見る人がどう受け取るか」の視点を持つほど、後のクレームや差止請求を回避できます。
使える文字と使えない文字(文字種ルール)
- 使える:漢字・ひらがな・カタカナ・英字・数字に加え、**一部の記号(&・’・,・.・-・・・/)**は使用可能です。
- 避ける:絵文字・異体字アート・機種依存文字などは不適切です。
- 空白の扱い:スペースは読みやすさ重視で限定的に。連続スペースや視認困難な装飾は避けます。
結局のところ、登記簿・請求書・名刺でブレずに表記できるかが判断基準です。
競合と被らないための「差別化フレーム」
次は覚えられ検索されるための設計です。以下の手順で短時間でも精度高く詰められます。
ステップ1:コアの連想語を3軸に分解
- 事業領域:何をする会社か(例:行政書士〇〇、〇〇建設DX、〇〇給食 等)。
- 提供価値:速さ・安心・デザイン・環境など。
- 地域・ターゲット:東京、東海、BtoB、中小など。
この3軸を2語以内で組み合わせるだけで、方向性が明確になります。
ステップ2:共起語を足して“固有化”
- 造語化:英語の一部と和語を合体(例:Axis+Support=アクシスサポート)。
- 音のリズム:4~6モーラ(ア・ク・シ・ス/サ・ポ・ー・ト)の覚えやすさを意識します。
- 語尾の処理:「〜ラボ」「〜ベース」「〜ホールディングス」で器の大きさを示すのも手です。
「意味×音×綴り」が整うと、誤入力にも強くなります。
ステップ3:同名・商標・ドメイン・SNSを同時チェック
- 法務:登記の同一住所・同一商号は登録可能でも、信用混同に注意します。
- 商標:J-PlatPat(https://www.j-platpat.inpit.go.jp/)で同一・類似を検索し、区分(第35類など)まで見ます。
- ドメイン:.com/.co.jp/.jpのいずれかで短く覚えやすいものを確保します(表記と読みが一致すると最強です)。
- SNS:主要プラットフォームのハンドル統一で指名検索を取りこぼさないようにします。
1時間の一括チェックだけで、後戻りコストを大幅に減らせます。
「検索に強い」名前の実践ルール
指名検索とカテゴリ検索の両取りを狙うと、立ち上がりが速くなります。
指名検索で勝つ
- 綴りが一つに定まる:小さい「ッ」「ー」の有無でブレない名称にします。
- 読みとURLが一致:ローマ字表記をURLに寄せると、入力ミスが減ります。
- 類似候補を同時確保:ブランド保護用によくある誤字URLを1~2件押さえると安心です。
結論として、“迷わず打てる”=名刺から一発で辿れるが勝ち筋です。
カテゴリ検索で拾う
- 社名+業種のサブコピーを常にセットで表示(例:アクシスサポート行政書士事務所)。
- 地名の併置:SEOだけでなく信頼性の補強にもなります。
- タグライン:7~12文字で差別化価値を言い切ると、検索結果のクリック率が上がります。
要は、社名単体の戦闘力に“説明の一語”を足すだけで露出が増えます。
NGっぽいけど工夫次第で使えるグレーゾーン
完全にアウトではないが、設計を誤ると誤認や差止のリスクがある領域です。
地域名・国名・“日本一”系
- 地域名・国名:実態と乖離が大きいと誤認の可能性。本店所在地や実績で裏づけを。
- 最大級表現(日本一・No.1):社名では避け、タグラインや広告で根拠付き表現に。
「名乗るからには根拠を同梱」が原則です。
他社の一般語+短い区別子
- 例:「ソラリス」に「東京」を足すだけ等は混同しやすいです。
- 回避策:強い造語パーツ(綴りの独自性)を必ず1つ入れます。
独自パーツが1つあるだけで、商標・検索・口コミの三方面に効きます。
失敗しないためのチェックリスト
短時間で法務×マーケの整合を確認できます。
10分でできる一次チェック
- 会社種別語が入っているか(株式会社など)。
- 規制業種の専用語を混ぜていないか。
- 文字種が妥当か(&・・/などの記号は最小限)。
- 発音・表記がブレないか(小さい“ッ”“ー”問題)。
- 同名・類似商号の有無(地図検索で近隣も確認)。
- J-PlatPatでの類似商標の確認。
- ドメイン・SNSハンドルの空き。
この一巡で80%の地雷は回避できます。
1日あれば仕上げられる二次チェック
- 読点・ハイフンの使い方(英字/カナで統一)。
- 海外での意味(スラング等の誤解を回避)。
- 外国語ドメインの発音しやすさ(電話口でも伝わるか)。
- ロゴ化した時の視認性(小さくしても読めるか)。
ここまで整えると、名刺・サイト・看板の統一がスムーズです。
まとめ(迷ったらご相談ください)
会社名づくりは、法的に通る・誤認を生まない・記憶と検索に強いの三条件を満たすのが理想です。
NGワードは、規制業種の専用語と誤認・公序良俗に関わる表現が中心です。
差別化は、造語パーツの投入とURL・ハンドルの一括確保が最短ルートです。
当事務所では、商号案の壁打ち→法務・商標・ドメインの同時チェック→議事録・定款反映→登記実務まで、ワンストップで伴走します。3~5候補をお持ちいただければ、“通る・伝わる・見つかる”の観点でベスト案へ磨き込みます。どうぞお気軽にご相談ください。
(注)本コラムは一般的な基準の解説です。金融・医療・教育など個別業法の専用語は運用が細かく、自治体・業界団体のガイドラインで追加制限がある場合もあります。最終決定前に、商標・業法・不競法の観点で個別確認をおすすめします。


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