経営事項審査とは(超要約)—しくみ・準備・点数UP

今回は、公共工事を「直接」受注する際に欠かせない経営事項審査(経審)について解説します。
経審の意味、誰に・いつ必要か、有効期間(審査基準日から1年7か月)、手続の流れ(決算変更届→経営状況分析→経営規模等評価・総合評定値)、必要書類と費用の要点、評点(X・Y・Z・W・P)の仕組みと“すぐ効く”点数アップ策まで、最新の公的手引に沿って簡潔にまとめます。

経営事項審査は誰が必要?

  • 誰に必要? 国・自治体などの公共工事を“直接契約”する建設業者は受審が法定で必須(建設業法27条の23)。入札資格とは別に、契約のために必要です。
  • 有効期間審査基準日(直前決算日)から1年7か月。通知書の受領日からではありません。毎年切らさない運用が基本です。
  • 手順の骨格
    ①決算関係の変更届
    ②経営状況分析(Y)
    ③経営規模等評価(X・Z・W)+総合評定値(P)」
    の順です。

経営事項審査の実務手順

  1. 決算後4か月以内に建設業許可の決算変更届を先に提出。その後すみやかに経審へ。
  2. 登録経営状況分析機関経営状況分析(Y)を申請し、結果通知書(原本)を受領。
  3. 許可行政庁へ経営規模等評価(X・Z・W)申請と総合評定値(P)の請求(同一様式で同時可)。
    手数料は評価:8,100円+業種×2,300円/P:400円+業種×200円。※Yの分析料は各登録機関に確認

点数(P)の仕組み(ざっくり)

  • 総合評定値Pの計算式は
    P = 0.25×X1 + 0.15×X2 + 0.20×Y + 0.25×Z + 0.15×W

X1(完成工事高評点)
X1は、会社がどれだけ工事を完成させ売上を上げたか(=完成工事高。決算で計上した完成した工事の売上額)の規模を点数化する指標です。基準は直近2年または3年の年間平均額のどちらかを選んで用い、金額が大きいほど点数は高くなります。実際の点数は、1,000万円未満〜1,000億円以上の42段階に区分された業種別の評点表に当てはめて決まります。

経営規模評点 X2
経営規模評点 X2 は、自己資本額点数平均利益額点数の2つを用いて算出する指標で、
計算式は
X2=(自己資本額点数+平均利益額点数)/2
です。自己資本額とは貸借対照表の純資産合計を指し、直近2年平均を用いるか単年とするかを選択できます。自己資本額点数は、この金額を0.1億円未満から3,000億円以上までの47区分に当てはめる評点テーブルで決まります。なお、自己資本は利益の内部留保増資などで計画的に強化することが重要で、自己資本の充実は企業の安定性向上に直結するだけでなく、金融機関からの評価の向上にもつながります。

経営状況評点Y
経営状況評点 Y は、企業の財務内容を
①収益性・効率性
②負債耐性(安全性)
③財務健全性
④規模力(絶対額)
の4領域から多面的に評価する指標です。各領域につき2項目、計8項目の値を用いて「経営状況点数 A」を算出し、Y=167.3×A+583で求めます。経営状況点数 A の計算式は
A= -0.4650X1 – 0.0508X2 + 0.0264X3 + 0.0277X4 + 0.0011X5 + 0.0089X6 + 0.0818X7 + 0.0172X8 + 0.1906です。
ここで用いる8指標は次のとおりです。
X1:純支払利息比率=(支払利息-受取利息配当金)/売上高×100(%)
X2:負債回転期間=負債合計/(売上高÷12)(ヶ月)
X3:総資本売上総利益率=売上総利益/総資本×100(%)
X4:売上高経常利益率=経常利益/売上高×100(%)
X5:自己資本対固定資産比率=自己資本/固定資産×100(%)
X6:自己資本比率=自己資本/総資本×100(%)
X7:営業キャッシュフロー(絶対額)=営業CF(二期平均)/1億(億円)
X8:利益剰余金(絶対額)=利益剰余金/1億(億円)

これらの数値により、企業の収益力・効率性・安全性・基礎体力を総合的に点数化します。

技術力評点 Z
技術力評点 Z は、会社の“技術力”を数値化する指標で、技術職員の資格状況(Z1)元請の完成工事高(Z2)から業種ごとに算出します。
計算式は
Z=(4×Z1+Z2)/5
です。
Z1(技術職員数点数)は、まず資格の重みづけで「技術職員数値」を求め、これを評点表に当てはめて決めます。重みは、一級監理受講者=6点、1級技術者(ただし一級監理受講者以外)=5点、監理技術者補佐=4点、基幹技能者(1級技術者以外)=3点、2級技術者=2点、その他技術者=1点を人数分合計します。なお、1人の職員は申請できる業種区分が最大2つまでで、雇用期間は6か月超が前提です。
Z2(元請完成工事高点数)は、直近1年または3年の平均のいずれかを選び、0.1億円未満~1,000億円以上の42区分の評点表で判定します。

実務としては、資格者の計画的な育成と記録の整備が肝心です。1級土木施工管理技士・1級建築施工管理技士など評価の高い国家資格の取得支援や、監理技術者講習の受講を計画的に進めるとZの底上げに直結します。あわせて、若手の採用とOJT、先輩からの体系的な技術伝承を仕組み化し、元請実績の裏づけ資料(契約書・請書・検査成績書など)を日頃からファイリングしておくと、Z1とZ2の双方で取りこぼしを防げます。

社会性等評点 W
社会性等評点 W は、建設業者としての社会的な取り組みや法令遵守の状況を点数化するものです。
算定は、
担い手確保の取組(W1)
営業継続力(W2)
防災協定(W3)
法令遵守(W4)
建設業経理の体制(W5)
研究開発(W6)
建設機械の保有(W7)
規格認証の取得状況(W8)

8項目の合計に係数を掛ける方式で
W=(W1+W2+W3+W4+W5+W6+W7+W8)×(1,750/200) です。
各項目の内容は次のとおりです。W1は雇用保険・健康保険・厚生年金・建退共などの加入状況など、働く人を支える取り組みを評価します。W2は営業年数に加え、民事再生や会社更生の適用有無といった継続性を見ます。W3は自治体等との防災協定の締結、W4は営業停止・指示処分の有無などのコンプライアンスです。W5は会計監査の受審状況公認会計士・税理士等の関与人数、W6は研究開発費の二期平均を基に0.5億円未満から100億円以上までの段階で評価します。W7は建設機械の保有台数による加点、W8はISO 9001・ISO 14001・エコアクション21などの規格認証の登録が対象で、なおISO14001を取得している場合はエコアクション21の重複加点はありません

実務上は、社会保険や建退共の加入証明、監査報告書、研究開発費の根拠資料、機械の保有証明、協定書や認証書など裏付け書類を日頃から整理保管しておくと、申請時の取りこぼしを防げます。

すぐに効く「点数UP」5選

  1. X1:業種間の“積み上げ”を正しく活用
    工事種別の取り扱いによっては他業種へ加算(積み上げ)できるケースがあります。
    要件に合うか手引の該当箇所で確認し、証憑を揃える。
  2. Z:有資格者を計画的に増やす
    技術職員名簿の整備は必須。監理技術者講習の受講など、直近改正で評価に触れる点もあるため、計画的に受講・資格取得を進める。
  3. Z:元請完成工事高の実績管理
    申請様式に工事種類別完成工事高/元請完成工事高を記載。契約書・請書等の裏付け資料を平時からファイリング。
  4. Y:財務の“8指標”を意識
    例:純支払利息比率・負債回転期間の改善、自己資本比率の引上げ、営業CFの黒字維持。日常の資金繰り・借換・資本強化がそのままY向上に直結します。
  5. W:社会性の加点を取りこぼさない
    社会保険・建退共・退職金(企業年金)・法定外労災の整備、CCUS(就業履歴蓄積)防災協定ISO等の認証、WLB(えるぼし等)を要件に沿って加点申請。直近改正の評価枠組みも要チェック。

よくある落とし穴

  • 「受領日」起算の誤解審査基準日(直前決算日)から1年7か月が正解。契約直前で失効しないよう、毎年の更新計画を。
  • Yを後回し経営状況分析(Y)を先に。Y原本がないと評価・Pへ進めません。

まとめ

  • (1) 経審は「直接契約」時の法定義務(2) 有効期間は審査基準日から1年7か月(3) 準備は「決算変更届 → Y → XZW+P」
  • 点数UPは、**実績(X1)と技術(Z)**を軸に、**財務(Y)・社会性(W)**の取りこぼしをなくす運用で。
  • 迷う論点(積み上げの可否・Wの要件・電子申請など)は、各整備局・都道府県の手引きで確認し、必要に応じて所管窓口か専門家へご相談ください。

参考(公的情報)

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