今回は、個人事業の「一人親方」が建設業許可を取るまでを整理したいと思います。
ここでいう「一人親方」とは、従業員を雇わずに元請・下請の仕事を受ける個人事業主のことです。
建設業許可とは、軽微な工事(原則税込500万円未満、建築一式は税込1500万円未満または木造150㎡未満)を超える工事を請けるために必要な、公的な営業許可のことです。
はじめに確認する基準
許可を検討するかどうかは受注金額で決まります。
見積や追加契約を合算して税込500万円(建築一式は上記特例)を超える見込みなら、早めに準備へ進みましょう。
一人親方が満たすべき五つの要件
建設業許可は共通の審査軸で見られます。名称は難しくても、やることは具体的です。
経営業務の管理責任者
会社や個人事業の経営を統括する立場にある人のことで、継続的に経営判断をしてきた実績が求められます。
個人事業主本人が該当するのが一般的で、請負契約・見積・請求・資金管理に関与した客観資料を束ねて示します。
専任技術者
営業所に常勤で置く技術責任者のことです。対象業種に合う「国家資格(例:施工管理技士)」または「相当の実務経験」で証明します。
実務経験は、どの工事を何年どの立場で担当したかを、注文書・写真・日報等で連続して説明します。
事務所要件
机・書庫・固定の連絡手段・標識を備えた実体のある拠点であることをいいます。
自宅兼用でも可能ですが、生活スペースを通らず応接できる動線や、帳簿を保管できる書庫の確保がポイントです。
財産要件
継続的に工事を受注できる体力があるかを見るものです。決算書(確定申告書)や預金の残高証明、資金繰り計画で示します。創業間もない場合は、直近の残高証明と資金計画で補強します。
欠格要件
申請者に一定の刑罰・行政処分歴、反社会的関係がないかの確認です。
虚偽記載は重大なリスクになるため、氏名・住所・生年月日の表記は書類間で統一します。
建設業許可を取得するまでのフロー
進め方は「診断→証拠→拠点→申請」の順が効率的です。
1. 事業の将来像(工事金額・主力事業・ビジョン)を整理する
受注予定の工事金額(税込)、追加の可能性、主力事業(今いちばん受けたい工種)、周辺環境(発注者の要望・協力会社の体制)、将来ビジョン(1〜3年で取りたい案件)を整理します。
2. 申請に必要な記録・証拠を集める
申請に必要な記録と証拠を「人物(経営と技術)・工事・お金」の順でそろえます。
人物は経営業務の管理責任者の在籍と専任技術者の資格/経験、工事は契約・見積・請求・写真、金銭は確定申告一式と残高証明を束ねます。
3. 事務所を整える
賃貸借契約、間取り図、入口・標識・机・書庫・連絡手段の写真を撮り、固定電話や専用携帯の連絡先を統一します。自宅兼用なら来客導線を図で示すと伝わりやすいです。
4. 申請書類を作る
業種の選定(まず主力事業に合う1業種)、誓約書、各種証明を手引どおりに整え、表記・日付・金額の整合を最終確認して提出します。
個人のままか、法人化してからかの比較
| 観点 | 個人事業のまま | 法人設立後に申請 |
|---|---|---|
| 速度 | 早い(登記が不要) | 設立手続の分だけ時間がかかる |
| 対外信用 | 取引先によっては弱め | 口座開設・与信で有利な場面あり |
| 税務・社会保険 | シンプルで始めやすい | 節税や人材採用で柔軟性が出る |
| 書類量 | 比較的少ない | 設立書類+許可書類で多い |
直近の受注が主力事業の一業種に集中しているなら個人のままで先に許可、将来ビジョンに人材採用や元請化があるなら法人化を同時検討、という分け方が現実的です。
よくあるミスと対処方法
表記の不一致
請負契約の氏名・住所、確定申告の表記、申請書の記載が微妙に違うことで差し戻しになります。対処方法は、正式表記を台帳化し、すべての書類をその表記に統一することです。
専任技術者の常勤説明が弱い
給与台帳や社会保険、名刺・メール署名・電話の連絡網をそろえ、日常的にその拠点で従事している記録を示すことです。
事務所写真が不十分で、実在性が伝わらない
入口・標識・机・書庫・応接の全景を同一レイアウト図とセットで提出し、賃貸借契約の使用目的も確認しておくことです。
金額基準の勘違い
基準となる工事金額を消費税を抜いて500万円未満と判断してしまう点です。
対処方法は、税込総額で判定し、追加契約や設計変更は合算して再チェックすることです。
準備にかかる期間の目安
証拠がそろっていれば1〜2か月で申請・審査まで進むのが一般的です。
繁忙期や補正対応で延びることもあるため、余裕を持ったスケジュールを組みます。
更新は5年ごと、事業年度ごとに決算変更届の提出が必要です。
まとめ
一人親方の建設業許可は、金額基準の確認、五つの要件の把握、三つの束での証拠集め、事務所整備、主力事業に合う業種選定という順番で進めると、無理なく到達できます。状況をうかがえれば、必要資料の洗い出しから写真の撮り方、申請書の作成、提出後の補正対応まで伴走します。最初の相談では、直近の見積・契約書、確定申告、事務所の写真をご用意ください。判断に迷わない進め方をご提案します。


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