飲食店営業許可の“検査で落ちない”準備:図面・設備・現地チェックの順番
飲食店営業許可は「申請書さえ出せば通る」と思われがちですが、実務では“図面と現場のズレ”や“設備の作り込み不足”で検査が伸び、オープン日がずれることが少なくありません。
特に内装工事は、着工してから直すほどコストも時間も増えます。
このコラムでは、工事前の事前相談から図面の作り方、現地検査の見られ方、指摘を受けたときの最短是正までを、初めての方にもわかるように順番で丁寧に解説します。
失敗しない全体工程(工事前が勝負)
飲食店営業許可は、原則として営業所を管轄する保健所に申請し、書類審査と施設検査を経て許可証が交付される流れです。
新たに食品を取り扱う営業を始める場合、食品衛生法に基づく「営業許可」の取得や「営業届出」を保健所で行う必要があること、そして許可を取るには業種ごとに定められた設備を整える必要があることが、自治体の案内でも明確にされています。
さらに、施設基準は全国一律の“1枚の正解”があるわけではなく、国の基準を参酌しつつ都道府県等が条例で定める仕組みです。つまり、同じ飲食店でも地域の運用差が出やすいので、早い段階で管轄保健所に確認し、「この店の計画なら何を満たす必要があるか」を図面レベルで握ることが近道になります。
工事前にやるべきことは、厨房機器のカタログを集めるより先に、レイアウト(動線)と“洗い物・手洗い・保管”の流れを文章で説明できる状態にすることです。なぜなら検査で見られるのは、設備があるかどうかだけでなく、「汚れたものが清潔側に戻らない導線になっているか」「手洗いが実務上きちんと使える配置か」といった運用の合理性だからです。ここが固まれば、工事の途中で「そこはダメなので壊して付け直し」といった痛い手戻りが減ります。
事前相談の使い方と準備物(図面確定前に一度持ち込む)
事前相談は、許可を“早く取るための裏技”ではなく、後戻りを防ぐための安全装置です。自治体の案内でも、申請時に現地調査日を決め、施設が図面と異なる・基準に適合しない場合は改善して再検査となり、改善されないと不許可の可能性があることまで説明されています。 つまり、検査当日に初めて指摘を受けるより、図面の段階で指摘を潰しておく方が、オープン日を守りやすいのです。
事前相談に持参するのは、完成形の図面でなくても構いません。むしろ「まだ変えられる」タイミングの方が価値があります。平面図(厨房・客席・トイレ・バックヤード)、設備の配置(シンク、手洗い、冷蔵冷凍、作業台、ゴミ置場など)、給排水と換気の概要、店舗の所在地情報があれば、保健所側も確認しやすくなります。食品衛生責任者は施設ごとに設置が義務付けられており、申請実務でも資格証明の提示が求められることが多いので、受講予定や保有資格の整理もこの時点で行っておくと安心です。
図面で見られるポイント
図面は「図としてキレイ」より、「検査官が衛生リスクを想像しやすい」ことが重要です。
施設基準は条例で定められ、国の参酌基準の枠組みに沿って整理されるため、共通して問われやすいのは、洗浄・手洗い・保管・区画・給排水・換気などの基本要素です。 図面が弱いと、検査官は安全側に判断せざるを得ず、「追加でこれを付けてください」という話になりがちです。逆に、図面が“運用の説明書”として作られていると、同じ設備でも合理的に通りやすくなります。
とくに飲食店は、仕込み→加熱→盛付→提供→下げ膳→洗浄→保管という流れが毎日発生します。この一連の流れの中で、汚れた器具や食器が、清潔な器具や食材と交差しないように配置されているか。スタッフが手を洗う必要が生じた時に、手洗い設備が「実際に使われる位置」にあるか。こうした視点が図面から読み取れると、検査での確認もスムーズになります。
シンク・手洗い・動線を「使い方」込みで説明する
シンクや手洗いの要件は自治体運用の差が出やすい領域です。近年の法改正・基準整理の中で、手洗い設備と洗浄設備の兼用を“時間帯を分ける運用”で認めた事例など、運用面を含めた判断がされる場面も示されています。
ここから言えるのは、「何槽必要です」と断言するよりも、店のオペレーション(何を、いつ、どこで洗うか/手洗いはいつ発生するか)を説明できるようにしておく方が、補正に強いということです。
図面上は、①洗浄(食器・器具)に使う場所、②手洗いとして専用に使う場所、③食材の下処理で水を使う場所を、できるだけ動線がぶつからないように配置し、混同が起きにくい構造にします。もしスペースの都合で兼用に近い使い方を想定するなら、「作業中は手洗い専用にする」「切替時に洗浄消毒する」など、運用ルールを文章化して事前相談で説明しておくと、現場で慌てずに済みます。設備の数だけで勝負するより、「衛生上の再汚染をどう防ぐか」を言語化するのがコツです。
現地検査のチェック項目
現地検査は“粗探し”ではなく、「図面どおりにできているか」「基準に適合しているか」を確認する場です。
自治体の手続案内でも、施設が図面と異なる場合や基準に適合しない場合は改善して再検査となることが明記されています。 つまり、検査で落ちないためには、検査官の目線で「ここは確認しやすい」「説明がいらない」状態に整えるのが最短です。
検査で確認されやすいのは、手洗い設備の実効性(使える状態か)、洗浄の流れ(汚れと清潔が交差しないか)、冷蔵冷凍など温度管理の置き方、床や壁の清掃性、給排水・換気の状態、ゴミや清掃用具の置き場、トイレ周辺の衛生配慮などです。これらは設備の“有無”と同じくらい、「現場で運用できるようになっているか」が問われます。内装が完成していても、物が散らかっていたり、清掃用具が食材の近くに置かれていたりすると、運用面の不安が出て指摘につながります。
当日の見せ方(図面・設備・記録を一つのストーリーに)
検査当日は、図面を印刷して持参し、設備の位置を指さしで説明できるようにしておきます。ここで効くのが「写真と図面の一致」です。工事が終わったら、外観・入口・厨房全景・各設備のアップを撮影し、図面の設備番号と対応させておくと、検査官の確認が早く進みます。万一、施工上の微調整で図面と現場がズレた場合でも、現場に合わせた“最終版の図面”を持っておけば、ズレ指摘で止まる確率が下がります。
また、食品衛生責任者は施設ごとに必要とされ、自治体手続でも資格証明の提示が案内されています。 「誰が責任者で、どのように衛生管理を回すか」を口頭で説明できると、検査の空気が安定します。とくに小規模店舗は“人で回す”部分が大きいので、掲示物やマニュアルが未完成でも、少なくとも「手洗い・清掃・温度管理・アレルゲン」など基本ルールは、開業日から運用できる状態に整えておきましょう。
よくある指摘と即日是正のコツ
指摘が出る典型は、
①手洗い設備が使いにくい位置にある/用途が曖昧
②洗浄導線が清潔側と交差している
③設備の設置状況が図面と違う
④保管スペースが不足して物があふれる
⑤清掃性が悪く汚れが溜まりやすい、などです。
これらは“設備の追加”だけでなく、“配置の微調整”や“運用ルールの明確化”で解決できることも多いです。実際、手洗い設備と洗浄設備の扱いを運用で整理して許可した事例が示されているように、設備を増やす前に「どう使い分けるのか」を説明できることが重要になります。
ただし、運用でカバーできる範囲は提出先の判断に左右されます。ここで最も危ないのは、検査後に「たぶんこのままでも大丈夫だろう」と自己判断してしまうことです。指摘は、できるだけその場で「どこまで直せば合格になるか」を具体的に確認し、是正後に写真で再確認してもらえるか、再検査が必要かを明確にしておくと、日程が崩れにくくなります。
追加工事を避ける“先回り”確認(工事中の中間チェックが効く)
追加工事を避ける最善策は、完成後の検査一発勝負にしないことです。工事の中盤、設備の位置が確定した段階で、保健所へ図面と現況写真を持ち込み「この配置で進めて問題ないか」を確認しておくと、致命的な手戻りを防げます。自治体の手続案内が示すとおり、図面と現場が違うだけで改善・再検査になり得るため、図面の最終版を“現場に寄せて更新”する運用がとても効きます。
是正が必要になった場合も、全部を作り直すのではなく「追加の手洗い器を付ける」「作業台の向きを変える」「保管棚を移動し清潔側を分ける」といった“小さく効く”是正から検討します。その上で、判断が微妙な場合は、無理に自己解釈をせず、保健所担当者に確認するのが最も確実です。行政手続は、窓口が求める形に合わせるのが最短ルートになります。
開業スケジュール例と費用感
開業は「工事が終わったら申請」では間に合わないことが多いです。申請→書類審査→施設検査→許可証交付という工程があり、自治体によっては営業開始予定日の一定日前までの申請が案内されています。 したがって、工事着工前から「図面確定」「機器発注」「責任者の手配」「申請準備」を並行させ、検査日を見込んで逆算する必要があります。特に厨房機器は納期遅延が起きると、検査に必要な設備が揃わず日程が崩れます。大きな買い物ほど“先に発注したい”気持ちになりますが、設備は図面とセットで決めるのが安全です。
費用感は、申請手数料(自治体の手数料表による)に加え、図面作成・設備工事・換気・給排水などの内装費が中心になります。手数料は地域差があるため、このコラムでは金額を断定せず、管轄自治体の案内で確認する前提にしておきます。重要なのは、指摘による追加工事が最大のコスト増要因なので、事前相談と中間確認で“追加工事を出さない設計”にすることです。
8週間モデル(逆算管理の例)
下記は、物件確定からオープンまでを8週間で見た「逆算の型」です。規模・工法・保健所の混雑で前後しますが、工程の置き方として参考になります。
| 週 | 主要タスク | 許可でつまずかない要点 |
|---|---|---|
| 1週目 | 基本設計/保健所の事前相談予約 | 図面は“変えられる段階”で持ち込む |
| 2〜3週目 | 図面確定/機器発注/責任者の手配 | 手洗い・洗浄・動線を説明できる形に |
| 4〜5週目 | 内装・設備工事(途中で中間確認) | 図面と現場のズレを早期に潰す |
| 6週目 | 完了確認/申請書作成/写真撮影 | 写真と図面を一致させ最終版へ更新 |
| 7週目 | 申請/施設検査(指摘是正) | 指摘は「合格条件」を具体で確認 |
| 8週目 | 許可/掲示・最終教育/オープン | 開業日から運用できる衛生手順を整備 |
まとめ/ご相談のご案内(アクシスサポート行政書士事務所)
結論ポイント
- 工事前に保健所へ事前相談し、図面段階で指摘を潰す。
- 施設基準は条例ベースで運用差があるため、管轄の確認が最優先。
- 図面は「シンク・手洗い・動線」を“使い方込み”で説明できるように作る。
- 検査は図面と現場の一致が重要。ズレは再検査につながりやすい。
- 開業は逆算管理。申請〜検査〜交付の時間を先に織り込む。
飲食店営業許可は、設備を“揃える”より先に、図面で「衛生的に運用できる」ことを説明できる形にするのが近道です。施設基準は国の枠組みを参酌して条例で定められるため地域差があり、事前相談での先回り確認が手戻りを減らします。 アクシスサポート行政書士事務所では、事前相談用の図面整理、設備配置の指摘ポイントの洗い出し、申請書類の作成、検査前の最終チェックまで、開業スケジュールに合わせて伴走します。内装工事前の段階ほど、できることが増え、コストも抑えられますので、お気軽にご相談ください。
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