デジタル遺品を遺言に反映する方法|SNS・暗号資産・ポイントの整理と文例

写真・連絡先・SNS・サブスク・暗号資産——大切な情報の多くが、いまはスマホとクラウドにあります。
相続が起きたあと、家族がログインできず手続が止まるケースは珍しくありません。
鍵になるのは、生前の「棚卸し」と「遺言への反映」です。

このコラムでは、専門知識のない方でもできる棚卸しの手順と、遺言に落とし込むときの考え方を、実例ベースで解説します。個別のサービス名や機能には触れつつも、まずは“何を、どこまで、誰に”伝えるかに集中します。

目次

デジタル遺品の範囲整理

金銭価値のあるもの(暗号資産、取引所残高、電子マネー、ポイント)

暗号資産や電子マネー、各種ポイントは、現金と同じく価値が変動・消滅することがあります。
取引所名、アカウントID、二段階認証の方法、残高の確認手順を台帳にまとめておきます。
利用規約上、承継が制限されるサービスもあるため、扱いを事前に把握しておくと安心です。

金銭的な価値は小さいが重要なもの(SNS、クラウド写真、サブスク契約)

SNSや写真のアカウントは、家族の思い出や連絡手段として重要です。
削除・保存・メモリアライズ(追悼化)の方針を決め、遺言書に意向を残します。
サブスクは解約や名義変更の手順をメモにし、請求が止まらないトラブルを予防します。

デバイス・アカウント・二要素認証(2FA)の関係

2FAは「パスワード+もう一つの鍵」です。
デバイス(スマホ)に届く認証コードや認証アプリ、バックアップコードの保管が鍵になります。
スマホの故障・紛失に備え、予備の認証方法を設定しておきましょう。

対象何を確認するか
スマホ画面ロックの解除方法、予備連絡先
メール回復用メールアドレス、電話番号
認証アプリバックアップコードの有無、移行手順

資産の棚卸しと台帳づくり

カテゴリ別チェックリスト(Google/Apple/Meta/主要取引所 等)

具体的なサービス名ごとに、ログインID、回復用情報、支払い方法、解約手順を1枚の表にまとめておくと、もしもの時に家族が迷いません。

カテゴリ台帳に残す要点
総合アカウントGoogle/Apple IDID、回復用連絡先、端末の位置情報やロック解除の手がかり
SNSX/Facebook/Instagramアカウント方針(削除・保存)、連絡窓口
暗号資産国内外の主要取引所取引所名、ID、2FAの方式、相続時の問い合わせ窓口
電子マネー・ポイント交通系・QR決済 等残高確認方法、承継の可否

ID・バックアップコード・秘密鍵の管理(回復手順の残し方)

ID・バックアップコード・秘密鍵は、盗難と喪失の両方を避ける必要があります。
紙に印刷して耐火金庫に保管する、信頼できる保管サービスを使う、二段ロックの封筒を用意するなど、家族の体制に合う方法を選びます。遺言書本体には、これらの情報そのものを書かず、保管場所と取り扱いの方針を記載するのが安全です。

法的・セキュリティ上の留意点(無断ログインの可否 等)

亡くなられた後であっても、利用規約や法令に反するアクセスはトラブルの原因になります。
家族や遺言執行者が正当な手順で確認・解約・引継ぎができるよう、事前に記録や委任の形を整えておきましょう。迷う場合は、サービス事業者のサポートに事情を伝えて指示を仰ぐのが確実です。

遺言への落とし込み

遺言執行者と受遺者の指定(デジタル資産に強い人材)

デジタル資産は、操作に慣れた人を遺言執行者として指名すると実務が進みやすくなります。
家族の中に適任者がいない場合は、専門家の関与を選択肢に入れます。
執行者と受遺者の役割を分けることも可能です。

遺言書に記載する際の文例:SNSの削除/アーカイブ、クラウド写真の引継ぎ

『私が死亡したとき、X及びFacebookのアカウントについては、遺言執行者が各サービスの定める手続に従い、削除または追悼化のいずれか適切な方法を選択して処理することを求める。クラウド上の写真データは、家族が閲覧できる形で保存・共有し、保存が困難なものは適宜削除して差し支えない。』

遺言書に記載する際の文例:暗号資産(ウォレット/取引所)の承継・手順の別紙化

私が保有する暗号資産について、取引所口座にあるものは相続人Aに、ウォレットに保管するものは相続人Bにそれぞれ相続させる。具体的なアクセス手順及び保管場所は、遺言執行者のみに開示する別紙にて管理する。遺言執行者は、相続開始後、速やかに各取引所の手続に従い、名義変更又は払出しを行う。

付言事項の活用(家族へのメッセージ・運用方針)

付言事項は、法的効力は限定的ですが、家族への気持ちや判断の背景を伝えるのに有効です。デジタル資産の取扱い方針(保存したい写真、公開したくない情報など)を短く添えると、残された方が迷いにくくなります。

相続手続の実務ポイント

暗号資産の相続評価(評価時点の記録・価格変動への備え)

価格変動が大きい資産は、相続開始時点の残高と評価を記録することが重要です。
スクリーンショットや取引履歴を保存し、どの相場を参照したかを明らかにしておくと、後の説明がしやすくなります。

各サービス事業者の死亡時ポリシー例(メモリアライズ 等)

主要サービスには、アカウントの削除・追悼化・代理人指定などの仕組みがあります。
生前に設定可能なものは設定し、設定がない場合はサポート窓口への申請手順をメモに残します。

デバイスロック解除・開示請求の手がかり(購入証明 等)

端末ロック解除やデータ開示が必要になったとき、購入証明書や保証書、シリアル番号が手続の助けになります。
箱やレシート類をまとめて保管しておき、台帳にも所在を書いておきましょう。

トラブル予防と定期メンテナンス

情報分散とアクセス権の設計(家族/執行者で役割分担)

すべての情報を一人が抱えると、紛失や事故のリスクが高まります。
家族と執行者で役割を分担し、必要な情報だけを共有します。

情報保管先の例
台帳(一覧)紙のファイル、共有クラウドの限定フォルダ
バックアップコード耐火金庫、信頼できる第三者預託
端末の予備解除情報封筒に封印し、執行者のみ開封可とする

緊急時のアクセス方法の保管(公正証書遺言+別紙)

アクセス方法そのものは遺言書に直書きせず、別紙や保管サービスに分離して管理します。
遺言本文には保管場所と管理方針だけを記載し、別紙の内容は必要時に執行者へ限定開示する、という二段構えが安心です。

半年~年1回の棚卸しリマインド

サービスの入れ替わりが早いため、半年~年1回のペースで棚卸し表を見直します。
新しく使い始めたサービスや解約したサービス、2FAの設定変更などを反映させ、家族にも更新したことを伝えます。

よくある質問(FAQ)

秘密鍵を遺言書に直接書いてよい?

A. 紛失・流出リスクが大きいためお勧めしません。遺言書には保管場所と取扱方針のみを記載し、秘密鍵は別管理にします。

取引所アカウントへ家族がログインするのは問題?

A. 規約上の制約があるため、原則として本人以外のログインは避けます。
相続発生後は、所定の手続に従って名義変更や払出しを行うのが安全です。

各種ポイントやサブスクは承継できる?

A. サービスによって扱いが異なります。承継不可のもの、一定の条件で承継可能なもの、相続財産としての取扱いが明確でないものがあります。
大切な残高がある場合は、事前に規約を確認し、家族に方針を共有しておきましょう。

まとめ

デジタル遺品は、紙の通帳のように「見れば分かる」ものではありません。だからこそ、生前に棚卸し表を作る→保管場所とアクセス権を決める→遺言で方針と担当者を明記する、この3ステップがいちばん確実です。秘密鍵など機微情報は遺言書に直接書かず、別紙や保管サービスを併用すると安全です。

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