「畑にパネルを立てるのに、役所の許可はいらないの?」――ここを勘違いすると、工事のストップや撤去指導につながります。本コラムでは、営農型太陽光(ソーラーシェアリング)に「農地転用許可が必要か」だけを、農家の方目線でやさしく解説します。
結論・・・「農地転用は必要です」
- パネルを支える支柱を畑に立てるなら、支柱の部分は「一時的に農地以外に使う」扱いになり、農地法の一時転用許可(4条/5条)が必要です。
- 許可の期間は、条件に合えば最長10年、そうでなければ原則3年です。
- 設置会社と耕作者が別で、地上権などの権利を設定する場合は、農地法3条の許可も必要です。
根拠(法令・手引)
国の整理では「営農は続けるが、上に発電設備をつける場合、地面に立つ支柱は転用許可の対象」とされています(令和6年4月の制度改正で明確化)。
省令(施行規則)には、申請に添付するものが条文で決まっています。
たとえば
①営農計画
②作物の収量への影響の見込み(地域データ・普及員等の意見・試験栽培の結果など)
③撤去費用を負担する誓約
④毎年の栽培実績・収支の報告の誓約等
です。
また、下の畑の収量が「おおむね2割以上落ちる」のはNGというラインも示されています。
ガイドライン(運用の手引き)では、許可期間の考え方が示されています。
「担い手の農地」「遊休農地の再生」「第2・第3種地域」などに当てはまれば10年以内、それ以外は3年以内が基本です。付帯設備(キュービクル等)は、できるだけ農地外に置く/申請面積は必要最小限に、という原則も押さえましょう。
(全国共通)一時転用の要否、添付書類、収量の目安、期間区分、3条併用の考え方は全国同じです。
(地域差が出やすい)権限が県から市町村へ移っている地域の有無、毎月の締切日や審査会の開催日、市街化区域で届出扱いになるか、様式の細部は各自治体の運用に従います(静岡県は様式が公開されています)。
ソーラーシェアリングを考えはじめた方のためのチェックリスト
□ 方式は「営農を続ける+支柱を立てる」で、野立ての全面転用ではない。https://www.maff.go.jp/j/nousin/noukei/totiriyo/einogata.html
□ 下の畑の単収(1反あたりの収穫量)が、市町村平均の概ね8割以上になる見込みを示せる。https://www.maff.go.jp/j/nousin/noukei/totiriyo/attach/pdf/einogata-16.pdf
□ 許可期間は、10年枠(担い手/遊休/第2・第3種)か、3年枠かを判定できている。https://www.maff.go.jp/j/nousin/noukei/totiriyo/attach/pdf/einogata-57.pdf
□ 設置者と営農者が別で地上権等を設定する→農地法3条許可も必要。https://www.maff.go.jp/j/nousin/noukei/totiriyo/einogata.html
□ 市街化区域なら4・5条が「届出」扱いの可能性があるため、自治体様式で確認済み。https://www.pref.shizuoka.jp/kensei/introduction/soshiki/1002123/1041030/1076776/1076782/1076787.html
※どれか×なら下記の「対応策」へ
対応策
- 【10年枠に届かない】まず3年枠でスタートし、営農実績(単収8割維持など)を積んでから再申請で10年枠へ。準備1~3か月、成功確度は「実績の裏付け次第」。
- 【担い手要件が弱い】「認定農業者」「認定新規就農者」「集落営農」などの体制づくりを先行。認定の取得に数週間~数か月。
- 【作目の相性が悪い】地域データのある作物に切り替え、遮光率・植え付け密度を調整。普及員等の意見書で説得力が上がります。
よくあるNG事項
- 【遮光し過ぎ】
売電を優先して影が濃くなると、単収(たんしゅう:単位面積あたりの収穫量)が8割を下回りやすく、基準に抵触します。→パネル間隔や角度、作物の種類・密度を見直し、普及員等の意見書で根拠を補強。 - 【面積の盛り過ぎ】
不要な空地まで申請に入れると、「必要最小限」の原則に反すると見られます。→付帯設備はできる限り農地外へ、申請面積は本当に必要な範囲に絞る。 - 【3条を失念】
地上権などの設定があるのに3条許可を出さないと、権利移動の無許可に当たるおそれ。→4/5条(転用)と3条(権利)を同時に用意する。
申請に必要な書類・証憑リスト
- 設備設計図(支柱・基礎・配置)…設置業者から入手。通常1~2週間。
- 営農計画+収支見込み…営農者が作成。1~2週間。
- 影響の見込み資料…地域の生産データ、普及指導員等の意見、試験栽培の結果などを組み合わせ。2~4週間。
- 撤去費用負担の誓約+年次報告の誓約…設置者が作成。即日~数日。
- (権利設定がある場合)農地法3条の申請書類一式…設置者・営農者の双方で準備。2~4週間。
電子申請の可否、原本提示の要否は自治体ごとに異なります(静岡は様式のダウンロード中心)。
手続フロー & 期間の目安
①事前相談(農業委員会・県/指定市町村)
②書類収集
③申請
④補正対応
⑤許可
⑥年次報告の開始
の順で進めます。
処理スピードは地域差がありますが、たとえば静岡県掛川市は「毎月の締切日(目安:18日頃)」に出すと、概ね1か月で許可という運用例があります(時期により前後)。年度末は締切が前倒しになることもあるので、早めの準備が無難です。
申請に必要な費用の目安
- 公的手数料:自治体により有無・金額が異なります。窓口での確認が確実です。
静岡市
3条許可・4条許可・5条許可・5条届出の費用は「無料」と明記されています。
三島市
申請(3条・4条・5条)は無料、一方で各種証明書は300円などと手数料表で明示。
藤枝市
「許可済証明」「受理済証明」「非農地証明済証明」などは発行手数料300円、耕作証明は無料と明示。
以上から、申請そのものの手数料はゼロ(無料)、**証明書発行は有料(概ね300円)**という整理が、県内自治体で共通的に確認できます。 - 事務所報酬:規模(区画数・筆数)、期間区分(10年枠/3年枠)、3条同時の有無で変わります。個別見積が基本です。
成功事例・失敗事例
【成功例】
露地野菜の農家さん。初期案は遮光率が高く、葉物の単収が下がる懸念がありました。
パネル列の間隔を広げ、作目の一部を根菜に変更。さらに普及指導員の意見書と地域の生産統計を添付して「単収8割以上を維持できる見込み」を明示したところ、10年枠で許可に。
提出段階で根拠がそろっていたため、補正は最小限で済みました。
【失敗例】
設置会社が地上権を設定し、農家さんが耕作を続ける形なのに、4条(転用)だけ申請してしまった。
審査途中で「権利移動にあたるので3条も必要」と指摘され、補正と再申請で数週間のロス。
以後は「4/5条(転用)+3条(権利)の同時申請」を社内ルール化して再発を防止しました。
Q&A
- Q. 許可期間はどう決まる?
A. 「担い手の農地」「遊休農地の再生」「第2・第3種地域」なら10年以内、そうでなければ原則3年です。 - Q. 市街化区域なら申請しなくていい?
A. 4・5条は「届出」で足りる運用の自治体もあります。必ず自治体の様式・案内で確認しましょう。 - Q. 単収(たんしゅう)はどのくらい必要?
A. 目安は市町村平均の約8割以上です。2割以上下がる見込みだと厳しいです。 - Q. 収支見込みは何を見るの?
A. 「営農を本気で続ける意思と見込み」を確認するための資料です。収支の数字だけで可否を決める趣旨ではありません。 - Q. はじめに誰へ相談?
A. お住まいの農業委員会、県(または指定市町村)の窓口が入口です。締切や様式もそこで確認できます。
まとめ
押さえるのは3点だけ――
①支柱を立てるなら一時転用許可が必要
②期間は10年枠か3年枠
③権利設定があるなら3条もセット。
ここを外さなければ、大きな手戻りは避けられます。
「単収8割の根拠」「権利関係が複雑」など迷う要素がある場合は、早めに専門家または窓口へ。
様式がそろい、条件がシンプルなら自力申請でも進められます。


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