はじめに――「専任技術者」の設置は“建設業許可の必須条件”です
建設業許可の相談で、いちばん最初にぶつかる壁が「専任技術者とはどういう役割のものですか?」という疑問です。
結論を言えば、専任技術者は各営業所に常勤で配置する“技術面の責任者”です。
見積・契約の内容が技術的に妥当かをチェックし、契約どおりに工事が進むよう社内外をつなぐ役割を担います。制度の狙いは、受発注の現場で不適切な契約や施工ミスを未然に防ぐこと。そのため「営業所ごと・常勤・専らその職務(専任)」という要件が置かれています。この位置づけは国土交通省の制度解説でも明記されています。
専任技術者はなぜ必要?
建設工事は「契約時の仕様の詰め」が6~7割を占めます。
ここで無理や無理解が生じると、現場にしわ寄せが来て事故やトラブルにつながります。
専任技術者は営業所に常勤し、仕様・数量・工期・体制の妥当性をプロ目線で管理し、契約の適正化と履行確実性を高める狙いがあります。国交省の資料でも、専任技術者には契約内容の確認や現場技術者のバックアップが求められると整理されています。
専任技術者となるための要件
専任技術者となるための要件は、大きく次の3つがあります。
1) 技術的資格・経験
一定の国家資格や、相当の実務経験で満たすこと。
2) 常勤性
その営業所に“普段から勤務”している実態(社会保険・給与台帳等で裏づけします)があること。
3) 営業所ごとの配置
営業所単位で1名ずつ必要(兼務には制限があります)です 。
なお、テレワークでも“専任に従事”できる態勢があれば満たし得ると明確化されていますが、他社との兼務や遠隔地居住など常勤性を欠く態様は不可とされています。
要件1)「技術的資格・経験」の条件を満たす方法
専任技術者となるために必要な「技術的・経験」についてを満たす条件は下記の方法があります。
①資格要件で満たす
もっとも分かりやすいのは国家資格者で満たす方法です。
たとえば、施工管理技士や建築士など、業種に応じた資格が代表例。資格で満たせる場合は、経験年数の立証に比べて証拠の整え方がシンプルで、審査側の理解も速いのが利点です。
業種ごとに該当資格が異なるため、申請先の「手引」や国交省・自治体の案内で必ず照合しましょう。
【一般建設業の専任技術者】国交省告示で定める施工管理技士(1・2級)、建築士、技術士等、業種に対応した国家資格者。
【特定建設業の専任技術者】1級施工管理技士/1級建築士/技術士、または国交大臣の特別認定。
②実務経験で満たす
資格要件をもつ方がいない場合でも、相当の実務経験で満たせる制度が用意されています。
基準年数は業種・学歴等により異なり、改正で緩和された部分もあります(詳細は最新手引で確認)。
このルートは証拠の連続性が鍵です。工事台帳・契約書・注文書・請求書・納品書などが工事名・相手先・金額・時期で首尾一貫しているか、担当した役割(職長・積算・現場管理など)が読み取れるかを重視して組み立てます。
改正点や解釈は自治体ページでの周知があるため、必ず該当年度の手引に合わせてください。
★指定建設業における例外があります!
土木一式、建築一式、電気、管、鋼構造物、舗装、造園の7業種(=指定建設業)については、実務+指導監督ルートは認められません。原則、一級国家資格等での充足が必要になりますので注意が必要です。
要件2)常勤性の判断
常勤性は「書類による証明」が必要です。
典型例は健康保険等の加入状況、給与台帳、就業規則・雇用契約、そして営業所写真(机・固定電話・標識・書庫)。最近はテレワーク勤務も想定されていますが、営業時間帯に迅速に応答できる、他社と兼務していないなど、専任の実態が崩れないことが前提です。
テレワーク時代の専任――どこまで常勤とみなされる?
国の基準では、テレワークによる従事も専任要件を満たし得るとされています。
ただし、遠隔地居住で通勤不能、他社兼務など常勤性を欠く態様は不可とされます。営業所の電話や来客対応に機動的に対応できる体制であること、社内規程や勤怠で“常勤の実態”を示せることが前提です。
要件3)営業所ごとの配置
営業所(本店または支店等)ごとに1名の専任技術者を常勤配置するのが原則です。
受注・見積・契約の実務は営業所単位で動くため、「A支店の専任技術者がB支店も兼務」は原則想定されていません。人員構成を見直す際は、売上構成や見積・契約の発生場所に合わせて配置を最適化すると、入札・随契双方で実務のムダが減ります。
よくある専任技術者NG事項――“つもり専任”“名義貸し”は一発アウト
典型的なNG事項は以下のものがあります。
(1) 他社で雇用されている人を“曜日限定”で兼務
(2) 現場に常駐し続けて営業所に不在
(3) 資格証はあるが在籍実態が無い(名義貸し)。
これらは差戻しや処分の対象です。とくに名義貸しは法令で明確に禁じられており、許可取消・営業停止等の重大リスクにつながります。制度の趣旨は「そこにいるプロが、契約の妥当性を守る」こと――この原則を外さない設計が必要です。
主任技術者と監理技術者との違い
監理技術者は、現場側の技術管理者です。
専任技術者は営業所で契約・履行を技術面から支える立場です。
名称が似ているため混同されがちですが、場所(営業所/現場)とミッション(契約確認/現場管理)が違う点をおさえましょう。なお、制度上の兼務可否や要件は細かい条件があるため、実際の配置計画は最新ガイドラインでの確認が安全です。
専任技術者の退職・異動・育休――どう備える?
専任技術者の退職や長期休業は、許可維持に直結するリスクです。対策はシンプルに3つ。
(1) 二重化:資格者の育成・採用で“二番手”を用意すること。
(2) 業務マニュアル化:見積審査・契約チェックの観点を文書化して属人化を低減。
(3) 外部ネットワーク:社外の技術者・コンサル・社労士等と連携し、緊急時の相談・採用ルートを確保します。 退職が見えた段階で、変更届の期限・証憑の手配・新任者の要件確認をカレンダー化すれば、稼働停止のリスクを最小化できます(様式・期限は各手引に従う)。
まとめ――専任技術者は「最初に整える必須条件」
建設業の生産性は“現場”だけでなく“契約の前工程”で決まります。
専任技術者は、その前工程を 標準化・見える化 する存在。 – 技術要件(資格or実務経験)を明確化し、 – 常勤の実態(社保・勤怠・座席・電話)を裏づけ、 – 営業所ごとに配置計画を組む。 この3点がそろえば、許可・入札・監査・品質のすべてが安定します。制度のニュアンスや改正点は毎年動きますので迷ったら、最新の国土交通省資料や自治体の「手引」を必ず参照し、必要に応じて専門家(行政書士や技術士など)に相談してください。

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